ECサイトを運営する上で、顧客の商品購入の決め手となる重要な要素のひとつが「商品画像」です。商品ページには、優れた構成やデザインを採用するだけでなく、顧客の興味を引き、知りたい情報が一目で伝わる商品画像を使用することが求められます。
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究(英語)によると、人間はわずか13ミリ秒(1000分の13秒)という極めて短い時間で画像認識ができると報告されています。商品の魅力を瞬時に伝え、顧客に興味を持ってもらうためには、商品画像の質だけではなく、見せ方や構図、適切な画像の選択にも注意を払う必要があります。特に、A/Bテストを活用して商品画像を精査することは、高いコンバージョン率の獲得や顧客体験の向上を目指し、プロダクトページの最適化を行う上で非常に効果的です。
この記事では、商品画像のA/Bテストを実施する具体的な手順や方法について解説していきます。効果的なテストのポイントや改善の手法を押さえ、顧客の購入意欲を最大限に高める画像選択に役立ててください。
1. サイズ感がわかる商品画像を比較する
サイズ感が一目でわかる商品写真を厳選します。一般に商品ページには詳細なサイズが記載されていますが、それだけでは実際の大きさをイメージしにくいのが現状です。メジャーを使えば実際のサイズを知ることができますが、その作業自体を煩わしいと感じる顧客も少なくありません。そのため、視覚的にサイズ感が伝わる画像を用意すれば、サイズを測る手間が省け、スムーズな購入の後押しとなります。A/Bテストでは、どのような身の回りのものと比較すべきか、どのようなアングルの画像が効果的であるかを検証していきます。
身につけるアイテムの商品画像には、人間の体の一部をあえて写りこませることを意識しましょう。商品を手に持たせる、実際に使用している様子を表現するといった方法で、実際の使用シーンを想像させることができます。また、誰もが知っている身近なものを近くに配置することで、商品のサイズ感を伝えることも可能です。ペットボトルやボールペン、A4用紙などを近くに配置すれば、閲覧者は直感的にサイズを把握できます。
例えば、お菓子メーカーのカンロは、オンライン限定商品「ホシフリラムネBOXセット」の商品ページで、ラムネの容器を実際に手で持っている写真を掲載し、サイズ感をわかりやすく伝えています。自宅用だけでなく、贈り物として検討している顧客にとっても、商品のサイズは購入を判断する重要な要素の一つとなります。手に持った容器のサイズから、セットとなるBOXのサイズも予想しやすく、円滑に購入手続きまで進められるでしょう。
2. 登場人物の有無を比較する
商品画像のテスト方法において、重要な要素の一つとなるのが登場人物の有無です。商品の魅力を伝えるために、笑顔の人物を登場させる画像は珍しくありません。しかし、笑顔や嬉しそうな表情の写真ばかりを多用すると、顧客から「感情がこもっていない」、「商品を売るためのわざとらしい演出である」、とネガティブに捉えられてしまう場合があります。
一般に、商品写真に笑顔の人物が写っていると、その商品に対する好感度を高める効果があるとされています。これは、他人のしぐさや表情、態度を無意識に真似してしまう認知バイアスのひとつで、ECサイトの定番手法です。しかし近年では、そうした嬉しそうな表情の登場人物がいる演出に慣れている顧客も多く、広告っぽさを感じてページを離脱してしまう場合もあります。さらに、商品画像に人物が登場することによって、商品そのものへ着目しにくくなってしまうケースも少なくありません。そこで、あえて登場人物のいない商品画像を使うことで、商品そのものの魅力を引き出す、商品購入後の自分の姿を想像しやすくなるる、といった効果が得られます。
KANADEMONO(カナデモノ)では、インテリアのコーディネート例を画像で紹介しており、商品が暮らしの中に溶け込む様子を顧客に伝えています。家具をシンプルなアイテムと組み合わせることで、顧客にインテリアのアレンジを想像させ、購入へと促す効果も期待できるでしょう。
3. 一般的な商品画像とUGCを追加した場合の比較
商品画像のA/Bテストにおいて重要な検証の一つに、一般的な商品画像のみの場合とUGCを併せて掲載した場合の比較があります。通常、EC撮影においては構図や小物、照明にこだわって品質の高い写真を撮影することが重要とされています。一方で、プロによる魅力的な写真や自社での商品撮影だけでなく、ユーザーやインフルエンサー、スタッフによるUGCを掲載することで、購入への信頼感が高まり、コンバージョン率を向上させる効果が期待できます。
アライドアーキテクツ株式会社の調査によると、64.6%の人が商品やサービス購入の際にUGCを信頼する、と回答したと報告されています。商品画像のA/Bをテストする場合には、UGCの有無で比較検証を行うことをおすすめします。
ECサイトのUGC活用の一例として三陽商会が挙げられます。商品画像の下部に店舗スタッフによるコーディネート画像を掲載することにより、着用した時のリアルな雰囲気が伝わりやすくなっています。また、着用者の身長も記載されているため、顧客は自身の身長と近い人の画像を参考にできるという大きなメリットもあります。
4. 商品画像のサイズを検証する
商品画像の表示サイズが適切かどうかを検証します。商品画像のサイズによってクリック率やコンバージョン率が変わるだけでなく、商品そのものの印象を左右することもあります。speero(英語)は、商品写真の画像サイズがエンゲージメントと商品の知覚価値に与える影響について検証しています。
同社のエンゲージメント調査では、商品のタイプやどのような文脈で商品を見ているかによってユーザーの受け止め方が大きく異なることがわかりました。例えば、ハードディスクドライブのようにスペックを重視するユーザーの多い商品では、画像サイズが大きいほどユーザーの関心が高まる傾向にあると報告されています。一方で、デザインを重視するユーザーの多いワイシャツなどでは、かえって画像サイズが大きくなると関心度が下がるという結果が出ています。こうしたユーザーの関心の度合を知るためには、ユーザーが注目した部分や読み飛ばした部分を、視覚的に可視化できるヒートマップが活用できます。
さらに同調査では、商品画像サイズが商品の価値にどのように影響を与えるかといった点も検証しています。スペック重視の商品では、商品画像サイズが大きくなるほど価値も高く評価される傾向があるのに対し、デザイン重視の商品では、商品画像サイズが大きい方が価値を低く評価されてしまうという結果を報告しています。
以上のことから、一般的に言われるベストプラクティスを鵜呑みにするのではなく、自分のECサイトで2種類のサイズの商品画像を用意し、実際にA/Bテストを行って検証することが重要です。アパレルやインテリアなどのデザイン性を重視する傾向のある商品では、画像をあえて小さくすることで、より多くのコンバージョンが得られることも珍しくありません。適切な余白を残すといった見せ方の工夫が効果的となることもあります。
5. 関連商品を写した商品画像を比較する
商品画像のテストにおいて、関連商品を写り込ませるかどうかでも顧客の印象は大きく変わります。特に、インテリアやアパレル商品において、商品画像そのものがコーディネート例としての役割も果たします。日常写真を活用してブランドの世界観を伝えるとともに、具体的な商品の配置や組み合わせを提案することもできるでしょう。
例えば、IKEA(イケア)のECサイトでは、インテリアコーディネートページからキッチンやリビング、ダイニングなど部屋別のインテリアを閲覧できる仕組みになっています。
IKEAのECサイトでは、主役となる商品だけでなく、写真に写り込んでいる関連商品の詳細ページにもクリック一つで移動でき、自然な形でクロスセルを提案しています。該当商品のページに遷移するには、白い丸がある部分をクリックするだけです。顧客がわざわざ商品カテゴリから検索し直したり、検索バーに商品名を入力したりする手間が省けるため、サイト離脱を防ぐ効果も得られます。例えばFrancFranc(フランフラン)では、コーディネート画像の下部に使用したアイテムの商品リンクをまとめて掲載しており、購入への動線を確保しています。
一方で、この手法を実際に導入している企業はまだ少数派です。競合他社との差別化を図りたい場合や、クロスセル促進による売上アップを目指す場合には、積極的に導入したい手法と言えるでしょう。
6. 商品の細部を写した画像を比較する
顧客の購入障壁を取り除くには、商品の細部を鮮明に写した画像が不可欠です。実店舗のように実際に触って確かめたり、試着したりすることができないECサイトだからこそ、テキストと画像でいかに商品の細部情報を伝えるかが重要となります。判断材料となり得る画像や情報が十分に含まれていない場合、顧客はページから離脱する傾向にあるため注意が必要です。
商品画像は、さまざまな角度から撮影するだけでなく、パーツを拡大することも大切です。細部がわかりやすいよう、背景やライティングにもこだわることをおすすめします。撮影が終わったら、画像編集ソフトを活用して、より見やすくブランドイメージに合うよう編集することも検討しましょう。
例えば、靴を販売するECサイトを運営している場合、着用シーンやコーディネートだけでなく、靴底や側面、紐の質感など細部にもこだわった靴の写真の撮り方を意識することが重要です。革靴などを扱うREGAL(リーガル)のECサイトでは、靴の内側の細かい部分まで確認できる拡大写真を掲載しているほか、靴によっては中敷きの様子が分かる画像も用意しています。これにより、長時間の革靴着用によるトラブルを懸念している顧客の不安を取り除く工夫がされており、画像による細部のアピールが購入への後押しとなっていることが伺えます。
まとめ
商品画像のテスト方法を検討しているEC事業主の方は、A/Bテストを行うことをおすすめします。A/Bテストを通して画像や商品ページの最適化を実現すると、コンバージョン率や顧客体験の向上が見込めます。
商品画像のA/Bテストのポイントは、サイズ感が一目でわかる商品画像や登場人物の有無、UGCの有無などに着目すると良いでしょう。あらゆる商品に適用できる普遍的なルールはありません。例えば電化製品などのスペックが着目される商品では、大きい画像の方が好印象を残す傾向にあります。反対に、インテリアやファッションアイテムなどデザイン性に注目が集まる商品は、画像を大きくしすぎてしまうと逆効果になる可能性があります。
クロスセルを実現するためには、関連商品が写った商品画像の活用も検討しましょう。その際には、顧客が円滑に各商品ページまで移動できるよう、画像上または画像の下などにクリック出来るリンクを用意しておくことが重要です。また、商品の細部がわかる画像はページ離脱を防ぎ、顧客に安心して商品を購入してもらうきっかけともなります。
商品画像のA/Bテストが終わった後も、定期的に検証をし直すことも重要です。テストを繰り返すことで、より効果的な商品画像を見つけることができ、商品の売上アップにつなげることが可能となります。一般的なベストプラクティスをそのまま鵜呑みにするのではなく、A/Bテストを元にした最適な商品画像を採用し、より効果的で売上につながるECサイトを実現しましょう。
商品画像のテスト方法に関するよくある質問
商品画像のテストとは?
商品画像のテストとは、自社ECサイトやマーケットプレイス上で商品を販売する際に、さまざまなアプローチの商品写真を比較し、最も売上につながる写真はどれかを検証するプロセスのことです。
商品画像のA/Bテスト方法は?
商品画像のA/Bテストは、以下のステップに沿って進めます。
- 目的を明確にし、課題を見つける:商品画像のテストを通して何を実現したいのかを明確化し、アクセス解析ツールやヒートマップツールを活用して課題を見つけだします。
- 仮説を立てる:課題を解決するための仮説を立てます。
- 改善するための戦略を立てる:仮説を元に、どのような画像のA/Bテストを行うのかを明確化します。A/Bテストを行う際は、比較対象を1か所に絞る必要があります。
- テストを実行する:A/Bテストツールを使ってテストを行います。
- データを分析し、改善を繰り返す:どちらの成果が良かったのかを検証し、改善策を講じます。定期的にテストを行って改善を続けていきます。
売れる商品画像とは?
- 画像の質が高い
- 商品の質感や色がわかりやすく、正確である
- 商品の全体像がわかる
- 商品の詳細がわかる
商品画像のA/Bテストを行う際の注意点は?
- 検証する商品画像は1組に絞る:複数の画像を一度にテストしてしまうと、どの画像が効果的だったのかがわからなくなります。
- 十分なテスト期間を確保する:テスト期間が短いと、十分なサンプルデータが集まらず、正確な検証ができなくなります。サイト訪問者数や閲覧者数は時期によって変動的であるため、必要なコンバージョン数やセッション数を目安にデータを集めると良いでしょう。
- 継続的に改善を繰り返す:A/Bテストは、繰り返し行うことで大きな成果につながることも珍しくありません。定期的にA/Bテストを行い、PDCAサイクルを回すことでより大きな効果を得られる可能性があります。




