国内のアパレルEC市場は拡大を続けており、各企業が独自の強みを活かして成長しています。売上を伸ばすには、すでに成果を上げている企業がどのような戦略や施策を実践しているかを把握することが重要です。
本記事では、アパレルEC成功事例7選を紹介します。

国内アパレルECの市場規模とトレンド
経済産業省の「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の物販系BtoC-EC市場規模は15兆2,194億円(前年比3.70%増)に達しました。このうち「衣類・服装雑貨等」カテゴリは2兆7,980億円(前年比4.74%増)で、食品・飲料・酒類に次ぐ第2位の規模です。また、同カテゴリのEC化率は23.38%で、物販系全体の9.78%を大きく上回っています。
また、物販系BtoC EC市場では、スマートフォン経由の売上が前年比8.96%増の9兆3,904億円となり、市場全体の61.7%を占めました。スマートフォンが主要な購入チャネルとなるなか、モバイルコマースを前提としたサイト設計がアパレルECでも重要になっています。
こうした市場成長の背景として、矢野経済研究所の「国内アパレル市場に関する調査」(2025年)では、コロナ禍で拡大したEC需要の定着や、実店舗とECを連動させるOMO(Online Merges with Offline)施策の強化が、その成長を後押ししていると分析されています。
アパレルEC成功事例7選
1. ユニクロ
ユニクロは、「LifeWear(ライフウェア)」をコンセプトに、機能性の高いシンプルな衣類を、性別や年代を問わず幅広いユーザーに提供しています。2025年8月期決算によると、国内ユニクロ事業の売上高1兆260億円(前期比10.1%増)のうち、EC売上高は1,523億円(売上高比14.8%、前期比11.2%増)となりました。
公式ECサイトでは、身長や体重、好みの着用感からおすすめサイズを提案する「MySize ASSIST(マイサイズアシスト)」、商品検索や着こなし相談に対応するAIチャットボット「UNIQLO IQ(ユニクロ アイキュー)」など、サイズや着こなしをサポートする機能が充実しています。商品ページにはスタイリング画像なども掲載されており、購入前のイメージを具体化できます。
実店舗との連携もユニクロの強みです。公式アプリ会員IDで実店舗とECの購買履歴を一元化し、ECで購入した商品を店舗で無料受け取りできる「ORDER & PICK(オーダー&ピック)」や店舗在庫検索など、オンラインと店舗をシームレスにつなぐ購買体験を提供しています。
2. ZOZOTOWN
ZOZOTOWN(ゾゾタウン)は日本最大級のファッションECモールです。約1,700のショップが出店しており、ブランド衣類や古着、靴、コスメまで幅広い商品を取り扱っています。運営する株式会社ZOZOが発表した2026年3月期決算短信によると、ZOZOグループ全体の商品取扱高は6,660億円(前期比8.4%増)に達しました。
大きな特徴は、テクノロジーを活用した多様な購買サポートです。足を3D計測し、シューズの推奨サイズを提案する「ZOZOMAT(ゾゾマット)」や、顔や肌色を撮影してコスメの色味を選べる「ZOZOGLASS(ゾゾグラス)」など、オンラインでも自分に合った商品を選びやすくする仕組みを提供しています。
また、販売チャネルの拡大にも力を入れています。 出店ブランドの実店舗在庫をZOZOTOWN上で確認・取り置きできる「店舗取り置きサービス」を提供し、オンラインから実店舗での購入につながる導線を整備しています。 さらに、Yahoo!(ヤフー)ショッピングにも出店しており、自社モール外からの集客にも取り組んでいます。
3. and ST
and ST(アンドエスティ)は、株式会社アンドエスティが運営するファッションECモールです。元々はグループ企業のブランドのためのECモールでしたが、2024年から外部ブランドの誘致も開始し、現在は50を超えるショップが出店しています。アンドエスティHDが発表した2026年2月期決算によると、and STのGMV(流通総額)は前期比14.8%増の462億円、会員数は2,170万人に達しました。
グループで実店舗を展開している強みを活かし、会員はオンライン・オフライン共通のポイント制度を利用できます。いずれのチャネルで購入してもポイントが貯まり、使える仕組みです。また、商品ページには実店舗スタッフによるコーディネート投稿「STAFF BOARD(スタッフボード)」が掲載されており、ユーザーは着こなしを参考にしながら商品を選べます。
オンラインと実店舗をつなぐアプリにも注力しており、1,000万ダウンロードを超えています。デジタル会員証としての機能に加え、商品ページでの店舗在庫確認や、アプリで購入した商品を店舗で受け取れる「クイックピック」など、オンラインと実店舗を横断した購買体験を支援しています。
4. BAYCREW’S STORE
BAYCREW'S STORE(ベイクルーズストア)は、株式会社ベイクルーズが運営する自社ECサイトで、JOURNAL STANDARD(ジャーナルスタンダード)やIENA(イエナ)など、同社が展開する50以上のブランドのアイテムを販売しています。最新のEC関連の業績は非公開ですが、同社は早くからECモール依存からの脱却を進めており、2020年8月期にはEC売上高510億円のうち77%にあたる391億円を自社ECで獲得したことを公表しています。
ベイクルーズストアの強みは、商品の魅力を伝えるコンテンツが充実している点です。各ブランドのブログやモデルの着用動画、スタッフによるスタイリング写真が掲載されており、商品画像だけでは伝わりにくい素材感や着用イメージを補っています。スタイリングを投稿しているスタッフをお気に入り登録することもでき、好みの着こなしを継続的に参考にできます。
実店舗との連携にも力を入れています。オンラインと実店舗の会員情報やポイントを共通化し、いずれのチャネルで購入してもポイントが貯まります。さらに、商品ページから店舗在庫を確認でき、ECと店舗を横断して利用できる購買体験を提供しています。
5. YZ STORE
YZ STORE(ワイジーストア)は、株式会社yutoriが運営するファッションECサイトで、Z世代を中心に支持される複数のストリートブランドを1つのプラットフォームに集約しています。2020年にはZOZOグループの一員となり、2023年12月には東証グロース市場へ上場を果たしました。2026年3月期の売上高は142億3,400万円で、自社EC比率が27.6%となっています。
EC戦略における最大の特徴は、ブランドごとに運用していたECサイトを2022年に1つのモールへ統合した点にあります。複数ブランドを統合したことで、特定ブランドから流入した顧客に対して他ブランドの商品も提案できるクロスセルを実現しています。
公式アプリの展開も積極的で、2024年9月にはダウンロード数が10万を突破しています。アプリならではの機能として、新作アイテムを通常より5分早く購入できる先行購入機能を提供しており、熱量の高いファンのニーズを捉えています。
6. graniph
graniph(グラニフ)は、株式会社グラニフが展開するアパレルブランドです。自社IP(知的財産)だけでなく、人気作品とのコラボレーションにも積極的なことで知られています。2020年にECモールへの出店をやめ、自社ECサイトに一本化したあと、売上高が2倍以上に拡大するなど、成長を続けています。
ECサイトでは、人気のIPを活用したコラボ商品のWEB先行予約販売などの企画を実施しています。たとえば、「ハリー・ポッター」とのコラボアイテムは、店頭販売の一日前からWEBでは先行予約販売を行っています。ECサイトを利用する明確な理由が生まれ、顧客との接点獲得に役立っています。
グラニフ公式アプリは、ECからの購入やデジタル会員証機能に加え、店頭で気になった商品のバーコードのスキャンにも対応しており、ECの商品ページへの導線となっています。この機能により、店頭で見つけた商品の在庫切れサイズをそのままECから購入することも可能です。 同社によると、現在はEC売上の約半分がアプリ経由となるまでに成長しています。
7. SNIDEL
SNIDEL(スナイデル)は、株式会社マッシュスタイルラボが2005年に立ち上げたレディースファッションブランドです。マッシュホールディングスの2025年8月期決算によると、SNIDELブランドの売上高は250億円規模に達し、マッシュホールディングス全体のEC化率も35%と高い水準を維持しています。
SNIDELのEC戦略で特徴的なのは、公式の販路を2つ運営している点です。当初は、マッシュホールディングスが運営する複数ブランドを取り揃えたECモール「USAGI ONLINE(ウサギオンライン)」で販売されていました。その後、SNIDELの世界観やコンセプトをよりユーザーに伝えるため、ブランド単独の公式ECサイトが後発でリリースされました。これにより、モールは新規顧客の獲得、公式ECサイトはブランドロイヤリティ向上という明確な役割分担を実現しています。
ブランド公式ECサイトは、コンテンツの質の高さが強みです。特別企画に関連するアイテムをまとめた特集ページや、シーズンごとのコレクションを紹介するページなど、視覚的に楽しめるコンテンツが充実しています。
まとめ
アパレルECで持続的な成長を実現するには、サイトやアプリの利便性、オフラインとの連携、ブランディングなどを総合的に強化することが欠かせません。今回紹介した成功企業はいずれも、自社のフェーズやブランド特性に合わせて、これらの施策を戦略的に組み合わせています。
こうした取り組みは、単なる販売チャネルの最適化にとどまらず、顧客との継続的な接点を生み出し、ブランド体験の質を高めることにつながります。ブランド価値を育みながら顧客との長期的な関係を築くという視点が、これからのアパレルEC成長における鍵となるでしょう。
アパレルEC成功事例に関するよくある質問
国内アパレルECの市場規模は?
経済産業省の「令和6年度電子商取引に関する市場調査」によると、2024年の物販系BtoC-EC市場における「衣類・服装雑貨等」カテゴリは2兆7,980億円の規模で、前年比4.74%増となっています。
アパレルECの成功事例は?
- ユニクロ
- ZOZOTOWN
- and ST
- BAYCREW’S STORE
- YZ STORE
- graniph
- SNIDEL




