新規顧客の獲得コストが増加するなか、売上を安定的に伸ばすには、既存顧客との関係を深め、リピート購入を促すことが重要です。しかし、どの顧客を優先して育成すべきか、どのような施策で長期的な関係を築けばよいか、悩んでいる方も多いでしょう。
こうした課題の解決に役立つのが、VIP顧客戦略です。VIP顧客は企業の売上や収益に大きく貢献します。良好な関係を築き、継続的な購入を促すことは、事業の成長につながります。
この記事では、VIP顧客戦略の重要性やVIP顧客の特定方法、獲得や維持のためのポイントを解説します。VIP戦略の例も参考に、自社に合ったVIP顧客戦略の実施に活用してください。

VIP顧客とは
VIP顧客とは、ビジネスにとって特に価値の高い顧客のことです。高額商品を購入する顧客だけでなく、少額であっても定期的に購入している顧客や、LTV(顧客生涯価値)の高い顧客なども該当します。
VIP顧客戦略とは
VIP顧客戦略とは、価値の高い顧客を特定し、ニーズに合った特別なサービスや特典などを提供するマーケティング手法です。顧客の価値に応じた体験やサービスを提供することで満足感を高め、LTVやブランドロイヤルティの向上を目指します。

VIP顧客戦略の重要性
- 利益の維持や向上につながる:8:2の法則(利益の80%は上位20%の顧客によって生み出されるという考え方)や、5:25の法則(顧客離れを5%改善すると、利益が25%向上するという考え方)が示すとおり、VIP顧客戦略を通じて顧客との関係を深め優良顧客を育成し、離脱を防ぐことで、安定した収益基盤を構築できます。
- ブランドロイヤルティの向上につながる:ニーズに合ったサービスや特典を提供することで、顧客のブランドへの愛着を深められます。
- 認知拡大や新規顧客の獲得につながる:VIP顧客はブランドを高く評価している可能性が高く、友人や知人に商品やサービスを進めてくれる可能性があります。口コミやUGC(ユーザー生成コンテンツ)を通じてブランドの魅力が広まれば、新規顧客との接点も増えます。
- 価格競争から脱却しやすくなる: 商品やサービス、ブランドそのものに価値を感じる顧客が増えることで、価格だけに左右されにくい顧客関係を築けます。
- 商品やサービスの改善につながる:ブランドへの関心の高い顧客からフィードバックを得ることで、顧客満足度の高い商品やサービスの開発につなげられます。
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VIP顧客を特定する方法
LTVを評価する
LTVは、1人の顧客が長期的に企業やブランドにもたらす利益の合計です。LTVを活用することで、顧客ごとの長期的な価値を把握し、VIP顧客を特定する際の判断材料にできます。
たとえば、一度に高額な商品を購入する顧客よりも、季節が変わるたびに商品を購入する顧客のほうが、長期的に大きな利益をもたらす場合があります。継続的な購入による貢献を評価することで、価値の高い顧客を見極めやすくなります。
LTVは、「平均購入単価×購買頻度×継続期間×粗利率」で計算できます。Shopifyストアを運営している場合は、Shopifyのストア分析を活用することで簡単にLTVを管理できます。
RFM分析を活用する
RFM分析とは、次の3つの指標を使って顧客の購買行動を評価する手法です。
- Recency(最終購入日):最後に商品を購入した日
- Frequency(購入頻度):商品を購入した回数
- Monetary(購入金額):購入金額の累計
たとえば、各指標をそれぞれ1〜5ポイントで評価し、合計15ポイント満点で顧客を分類することで、VIP顧客の候補を見つけやすくなります。各指標の配点や評価基準は、事業形態や販売方法に応じて調整しましょう。自社のビジネスモデルに合った基準を設定することで、優先的にアプローチすべき顧客を見極め、適切な施策につなげられます。
平均注文額を確認する
平均注文額(AOV)は、注文1件あたりの平均購入金額を示す指標です。総売上を注文数で割ることで算出できます。
平均注文額を確認すると、平均金額を上回る顧客を把握でき、VIP顧客を特定する判断材料になります。たとえば、平均注文額が5,000円のECサイトで、1回の注文に2万円を支払った顧客は、VIP顧客の候補と考えられます。
こうした顧客を早期に特定することで、VIP顧客向けの特典や限定商品の先行販売、クロスセル施策などを実施できます。
顧客の行動データを確認する
VIP顧客を特定するには、購入金額だけでなく、取引を続けている期間やエンゲージメントを確認します。長期間にわたって継続的に購入している顧客は、安定した売上に貢献してくれるため、VIP顧客の候補と考えられます。
エンゲージメントの測定には、メールの開封率やSNSの反応率などを活用できます。こうした行動データを購入履歴と組み合わせることで、継続的な購入が期待できる優良顧客を見つけやすくなります。
ブランドロイヤルティの高い顧客を見つける
購入金額が少なくても、ブランドロイヤルティが高く、口コミやUGC、紹介を通じて新規顧客の獲得に貢献している顧客は、VIP顧客の候補となります。たとえば、年間の購入額が5,000円でも、高額商品を購入する顧客を5人紹介してくれる場合、ブランドにとっては大きな価値があります。
紹介件数や紹介プログラムで獲得したポイント数などを確認することで、購入金額だけでは見えにくい顧客の貢献度を把握し、VIP顧客を特定しやすくなります。

VIP顧客を獲得・維持する方法
ロイヤルティプログラムを導入する
ロイヤルティプログラムは、ポイントや限定特典、割引などを提供し、顧客の継続的な購入を促す施策です。顧客のニーズに合った特典を提供することで、顧客満足度やブランドロイヤルティの向上が期待でき、VIP顧客の獲得や維持につながります。
ロイヤルティプログラムは、ブランドや販売形態に合わせて設計します。たとえば、サブスクリプションでは、契約期間や継続回数に応じて料金を割り引いたり、人気商品のサンプルや現品をプレゼントしたりする方法があります。他にも、会員ランクに応じた誕生日特典や、次回購入時の割引、ストアクレジットの付与なども有効です。
こうした施策は、リピート購入や客単価の向上を促し、LTVや売上の拡大も期待できます。
マーケティングをパーソナライズする
顧客の購買データに基づき、個々のニーズに応じたマーケティング施策を実施することも、顧客満足度の向上や顧客ロイヤルティの強化に効果的です。
売れ筋商品を一律に紹介するのではなく、購入履歴や好みの商品カテゴリー、平均注文額、季節ごとの購買傾向などを分析し、顧客一人ひとりに合った商品や特典を提案することで、「自分のニーズを理解してくれている」と顧客に感じてもらうことができます。購入履歴に応じてアップセルやクロスセルを実施することで、リピート購入も期待できます。
顧客の関心に合わせたアプローチを取り入れることで、顧客数が増えても、一人ひとりとのつながりを大切にしたマーケティングを実現でき、VIP顧客との関係強化につながります。
質の高いカスタマーサービスを提供する
質の低いカスタマーサービスは、顧客離れを引き起こす要因の一つです。新規顧客をリピーターへ、さらにVIP顧客へと育成するには、顧客満足度を高める対応が欠かせません。たとえば、購入者へのお礼メールや手書きの誕生日メッセージなどが有効です。
VIP顧客には、専用ページや限定セールへのアクセス、限定コミュニティへの招待、専任担当者によるサポートなど、特別な体験を提供しましょう。継続的に購入するメリットを感じてもらうことで、顧客との関係を強化し、VIP顧客の維持やリピート購入につなげられます。
VIP顧客のニーズや課題を把握する
購入後のアンケートなどを通じて顧客の意見や要望を把握することも、VIP顧客の獲得や維持において重要です。得られた意見を商品やサービスの開発に活かすことで、顧客満足度の高いサービスや商品の提供につながります。
また、直接ヒアリングすることで、顧客は「ブランドづくりに参加している」という意識を持つようになり、ブランドへの信頼感や親近感の向上が期待できます。
VIP顧客戦略の企業例
Dior
Diorは、購入回数と購入金額に応じて会員ステータスが4段階に分かれるロイヤルティプログラムを導入しています。最低ランクでも2回の購入と累計4万4,000円以上の利用が条件となり、最上位のプラチナは5回の購入と累計27万5,000円以上の利用が必要です。
購入金額だけでなく回数も条件に含めることで、継続的な購入を促しています。また、上位ランクほどギフトが充実し、会員限定のプレゼントを通じて特別感を演出しています。一般には手に入らない限定品を受け取れることは、顧客満足度やブランドロイヤルティを高めるだけでなく、顧客による自発的な情報発信を促し、UGCの創出にもつながります。こうした特別な体験は、VIP顧客との関係を深める戦略の一つです。
DECORTE
DECORTEは、2024年9月から、新たなメンバーシッププログラム「CLUB DECORTÉ」を導入しています。新プログラムでは顧客情報を一元化し、どのチャネルから購入した場合でもポイントが付与され、ポイント数に応じてギフトやサービスが提供されます。メルマガ登録や商品レビューの投稿などにもポイントが付与される点が特徴で、顧客エンゲージメントの向上や顧客接点の維持に成功しています。さらに、選定条件を公開していない招待制の「EXECUTIVE MEMBER」制度を設け、招待された会員に特別なサービスを提供することで、優良顧客の囲い込みを図っています。
また、共通メンバーシップID「KOSE ID」と顧客データ分析基盤「KARTE」を活用し、あらゆる接点での情報を統合、分析しています。一元化した情報をもとに、顧客一人ひとりの行動に合わせて、店舗での接客やマーケティング施策をパーソナライズし、VIP顧客の育成やLTVの向上を実現しています。
顧客のブランドロイヤルティを高め、長期的な顧客関係の構築につなげている好例です。
まとめ
VIP顧客戦略は、売上の拡大と安定した事業成長を実現するために重要な取り組みです。購入金額だけでなく、購入頻度やブランドへの関与度も踏まえてVIP顧客を特定し、継続的な関係を築くことが大切です。
VIP顧客の育成や維持には、パーソナライズドマーケティングやロイヤルティプログラム、限定特典の提供などが有効です。顧客一人ひとりのニーズに合った体験を提供することで、顧客満足度やブランドロイヤルティの向上、LTVの最大化につながります。
まずは、顧客の購買データや行動データを分析し、VIP顧客の定義と選定基準を明確にします。そのうえで、顧客の特性に応じたVIP戦略を実施することで、長期的な顧客関係が構築でき、売上向上にもつなげられます。
VIP顧客戦略に関するよくある質問
VIP戦略とは?
VIP戦略とは、企業への貢献度が高い顧客に対して、ニーズに応じた特別なサービスや特典を提供し、LTVやブランドロイヤルティの向上を図るマーケティング手法です。
VIP顧客戦略とロイヤルカスタマー施策の違いは?
VIP顧客戦略は、売上貢献度などを基準に価値の高い顧客を特定し、差別化されたサービスや体験を提供することで、顧客満足度や売上の向上を目指す施策です。一方、ロイヤルカスタマー施策は、購入頻度や売上だけでなく、企業やブランドへの愛着といった心理的なロイヤルティも重視し、長期的な関係の構築を目指します。
VIP顧客戦略のメリットは?
- LTVの向上
- 売上の拡大と収益の安定化
- リピート購入の促進
- ブランドロイヤルティの向上
- 口コミやUGCによるブランド認知の拡大
- 新規顧客の獲得
- 長期的な顧客関係の構築




