自社だけでマーケティングを行う場合、リーチできる顧客層や利用できる販売チャネル、予算などには限りがあります。そこで役立つのが、ほかの企業やクリエイター、団体などと協力し、互いの強みを活用するパートナーマーケティングです。
たとえば、ブランド同士でコラボ商品を販売したり、インフルエンサーに商品を紹介してもらったり、他社の店舗やECサイトを販売チャネルとして活用したりする取り組みが挙げられます。パートナーが持つ顧客基盤や知名度、専門性などを組み合わせることで、自社単独では接点を持ちにくい顧客にもアプローチできます。
この記事では、パートナーマーケティングとは何かを説明し、パートナーマーケティングの主な種類やメリット、効果を高めるための戦略を紹介します。

パートナーマーケティングとは
パートナーマーケティングとは、ほかの企業や団体、個人と協力し、互いの強みや顧客基盤、販売チャネルなどを活用して、商品やサービスの認知向上や販路拡大、市場開拓を目指すマーケティング手法です。
パートナーマーケティングでは、パートナー同士で価値を提供し合うことが基本となります。たとえば、企業が自社の商品と相性のよい分野で活動するクリエイターに商品や報酬を提供し、SNSなどで紹介してもらう方法があります。また、家具と観葉植物、スポーツウェアとフィットネスサービスのように、提供する商品やサービスは異なっていても、共通する顧客層を持つ企業同士が共同キャンペーンを実施することもできます。
パートナーマーケティングに含まれる取り組みは幅広く、アフィリエイト、インフルエンサーマーケティング、共同商品開発、イベントスポンサーなどもその一例です。
似た言葉に「共同マーケティング」がありますが、共同マーケティングは、主に複数の企業が協力して商品やサービスをプロモーションする取り組みを指します。

パートナーマーケティングのメリット
新しい顧客層にアプローチできる
パートナーが持つ顧客基盤やSNSのフォロワー、メール配信リスト、実店舗などを通じて、自社だけでは接点を持ちにくい顧客にも商品やブランドを知ってもらえます。
たとえば、家具ブランドが観葉植物ブランドと共同キャンペーンを行えば、それぞれの顧客にもう一方のブランドを知ってもらうきっかけを作れます。ターゲット層や関心分野が近いパートナーと組むことで、自社の商品に興味を持つ可能性が高い顧客へ効率よくアプローチできます。
また、コラボ商品や共同キャンペーンは話題になりやすく、SNSでの拡散やメディア掲載などを通じて認知がさらに広がることもあります。
マーケティングのリソースを補完しあえる
パートナーマーケティングでは、互いが持つ人材や専門知識、コンテンツ、販売チャネルなどを活用できます。たとえば、商品開発に強い企業と販売網を持つ企業が協力すれば、優れた商品を効率的に市場へ展開できます。共同で広告やキャンペーンを実施し、制作費や広告費を分担することも可能です。
自社にない強みをパートナーに補ってもらえるため、限られた予算や人員でマーケティングに取り組む場合にも有効です。
ブランドへの信頼を高められる
消費者からすでに信頼されている企業やクリエイターと組むことで、自社の商品やブランドへの信頼につながることがあります。
たとえば、特定の分野で支持されているクリエイターが実際に商品を使って紹介すれば、「このクリエイターが紹介している商品だから安心だ」と感じてもらいやすくなります。認知度や実績のある企業との共同企画も、新規ブランドが社会的信用を得るきっかけになります。
一方で、パートナーのイメージは自社のブランドイメージにも影響します。知名度だけで選ばず、価値観や理念、ターゲット層との相性を確認することが重要です。

パートナーマーケティングの種類10選
- アフィリエイトマーケティング
- ブランドアンバサダー
- ロイヤルティプログラムの提携
- インフルエンサーマーケティング
- 共同事業(ジョイントベンチャー)
- 共同ブランディング(コ・ブランディング)
- ライセンス提携
- 販売提携
- イベントスポンサー
- 非営利団体とのパートナーシップ
1. アフィリエイトマーケティング
アフィリエイトマーケティングは、パートナーが商品やサービスを紹介し、その紹介を経由して購入や申し込みなどの成果が発生した場合に報酬を支払う仕組みです。
商品の紹介には、成果を計測するためのアフィリエイトリンクが使われます。企業がアフィリエイトプログラムを始める際は、広告主とメディアやクリエイターを仲介するASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)を利用する方法があります。ASPでは、提携先の募集や成果の計測、報酬の支払いなどをまとめて管理できます。
たとえばムラサキスポーツでは、2024年にアフィリエイト広告を開始し、商品と親和性の高いメディアやインフルエンサーを通じて集客に成功しています。導入後にはROASが2,000%を超えるなど、売上拡大にもつながっています。
2. ブランドアンバサダー
ブランドアンバサダーを起用したマーケティングは、ブランドの商品や理念に共感する人に、一定期間継続して商品やサービスの魅力を発信してもらう手法です。
ブランドアンバサダーは単発で商品を宣伝するだけでなく、SNS投稿やイベントへの参加、商品レビューなどを通じて継続的にブランドと顧客をつなぐ役割を担います。ブランドを普段から利用している著名人や、その分野に詳しいクリエイターを起用すれば、実際の利用者に近い視点から商品の魅力を伝えられます。
石川県加賀市に拠点を置く食器ブランドのARAS(エイラス)では、テーブルコーディネーターやインスタグラマーなどを公式アンバサダーに起用しています。SNSでの発信に加え、ブログや、店舗イベントなど、さまざまな形で商品の使い方や魅力を伝えています。
3. ロイヤルティプログラムの提携
ロイヤルティプログラムの提携は、複数の企業が連携し、それぞれの顧客にポイントや会員特典などを提供する方法です。パートナーのサービスを特典に加えることで、自社の会員制度の魅力を高めるとともに、提携先への送客にもつなげられます。
たとえばスノーピークでは、ポイント会員を対象に、提携するキャンプ場での割引や優待などの特典を提供しています。アウトドア用品を販売するブランドと、実際にキャンプを楽しむ場所を提供する事業者が連携することで、会員に新たな利用機会を提供しています。
4. インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングは、SNSや動画配信サービスなどで影響力を持つ人に商品やサービスを紹介してもらう手法です。パートナーを選定する際は、フォロワーが自社のターゲット層と一致していることに加えて、フォロワー数、投稿内容、フォロワーとの関係性などを確認することが重要です。
たとえば花王は、運営するKATEの口紅「リップモンスター」のマーケティングで、10~20代の利用者が多いTikTokやYouTubeを中心にインフルエンサーを起用しました。リップの色持ちや色移りをテストする投稿を行ってもらうことで、SNS上での商品認知の拡大や口コミ拡散に成功しています。
なお、企業が投稿内容の決定に関与しているにもかかわらず、広告であることが消費者に明示されていない場合は、ステマ規制の対象になる可能性があります。インフルエンサーへの依頼や商品提供を行う場合は、「広告」「PR」などを投稿に表示して広告であることを明確に伝えましょう。
5. 共同事業(ジョイントベンチャー)
共同事業(ジョイントベンチャー)は、複数の企業が資金や技術、ノウハウ、顧客基盤などを持ち寄り、新しい商品やサービス、事業を共同で展開する方法です。共同出資で新会社を設立して事業を行うケースもあります。
たとえば、オイシックス株式会社と、千葉県木更津市で体験型施設を運営するKURKKU FIELDS(クルックフィールズ)は、2024年に合弁会社「オイシクル」を設立しました。両社の強みを活かし、商品の共同開発やファームツアー、イベントなどを共同で展開しています。
共同事業はほかのパートナーマーケティングよりも連携の範囲が広いため、費用負担や利益配分、役割分担、知的財産権などについて事前に取り決めておくことが重要です。
6. 共同ブランディング(コ・ブランディング)
共同ブランディング(コ・ブランディング)とは、複数のブランドがそれぞれのブランド名や特徴を活かし、共同で商品やサービスを開発する方法です。それぞれのブランドが持つファン層にアプローチできるだけでなく、それぞれの技術やノウハウを掛け合わせることで、単独では作れない新しい価値を持つ商品を生み出せます。
たとえば、小柄な女性向けのファッションブランドCOHINA(コヒナ)は、バッグや財布を展開するブランドHASHIBAMI(ハシバミ)とコラボ商品を販売しています。コラボレーションでは、HASHIBAMIの商品を小柄な女性が使いやすいようにアレンジし、双方のブランドの特徴を活かした商品を展開しました。
7. ライセンス提携
ライセンス提携は、他社が所有するブランド名やロゴ、キャラクター、作品などの知的財産を、許諾を得て商品やマーケティングに利用する方法です。人気キャラクターや映画、アニメなどの認知度を活用できるため、新しい顧客層への認知拡大につながります。
たとえば、オンライン酒屋のKURAND(クランド)では、漫画やアニメ、ゲームなどとのコラボ商品を展開しています。2026年には『キボウノチカラ~オトナプリキュア'23~』のキャラクターをイメージしたオリジナル酒を販売するなど、作品の世界観を活かした商品を企画しています。
なお、利用できる媒体や期間、地域、商品の範囲などは契約内容によって定められるため、権利関係を事前に確認する必要があります。
8. 販売提携
販売提携は、小売店や販売代理店など、他社が持つ販売チャネルを活用して商品を販売する方法です。自社だけでは接点を持ちにくい顧客にも商品を届けられるため、販路や認知の拡大につながります。
たとえば、全国各地の酒蔵の日本酒を小容量アルミ缶で販売するKURA ONE(クラワン)は、東横INNの館内自動販売機で商品を販売しています。地域と共生するホテルづくりを掲げる東横INNにとっては、地域性を感じられるお土産や部屋飲みの選択肢を顧客に提供でき、KURA ONEにとっては各地の日本酒を旅先の宿泊客に届ける新たな販路となっています。
パートナーを選ぶ際は、販売規模だけでなく、自社の商品を利用する場面や顧客層との相性を考えることが重要です。
9. イベントスポンサー
イベントスポンサーとは、資金や物資を提供してイベントの運営を支援する代わりに、ブランドや商品をプロモーションする機会を得る仕組みです。自社のターゲット層が興味を示すイベントを選べば、ブランドを効果的に訴求できます。商品を実際に試してもらう機会を設けるなど、広告だけでは提供しにくい体験を作れるのも特徴です。
たとえば、サプリメントブランドのLypo-C(リポ・カプセル)は、2026年に国際セーリング大会「江の島ウィーク2026」の冠スポンサーを務めました。大会会場には商品を体験できるブースを設け、選手やその家族、指導者などに商品を試してもらう機会を提供しています。
10. 非営利団体とのパートナーシップ
企業がNPOや環境団体、地域団体などと協力し、社会課題の解決に取り組むことも、パートナーマーケティングの一種です。
寄付だけでなく、共同キャンペーンの実施や商品の提供、従業員の参加など、さまざまな形があります。自社の企業理念と親和性の高い団体と継続的な関係を築くことで、自社の社会課題への姿勢を具体的な行動で示すことができます。
たとえば、サステナブルな商品を扱うオンラインストアのBorderless Creations(ボーダーレス クリエーションズ)は、環境保護を支援する非営利団体「1% for the Planet」に加盟しています。年間売上の1%を環境保護団体へ寄付しながら、環境ビジネスとしての取り組みを続けています。

パートナーマーケティングの効果を高める4つの戦略
1. 価値観やターゲット層が合うパートナーを選ぶ
パートナーを選ぶ際は、知名度やフォロワー数だけでなく、自社との相性を確認しましょう。まず、自社が「誰にどのような価値を提供するブランドなのか」を整理します。ブランドポジショニングやUSPを明確にしておくことで、どのような相手と組めば双方にメリットがあるのか判断しやすくなります。
さらに、次のようなポイントを確認することで、適切なパートナーを選定しやすくなります。
- ターゲットとなる顧客層が近い、または補完関係にあるか
- ブランドの価値観やイメージが合っているか
- 自社にはない顧客基盤や専門性、販売チャネルを持っているか
- 自社からも相手に提供できる価値があるか
- 過去の広告やSNS上の発信に問題がないか
異なる強みを持ちつつも、目指す方向が一致しているパートナーを探しましょう。
2. 条件や役割を事前に決める
協業を始める前に、双方が担当する業務や負担する費用、得られる利益などを具体的に決めます。特に次の項目は、必要に応じて契約書などに明記します。
- 報酬や利益の分配方法
- 広告費や制作費などの負担
- キャンペーン期間や提携期間
- 双方が制作、提供するもの
- ロゴや画像などブランド資産の利用条件
- 広告内容やSNSへの投稿内容の承認方法
- 成果を評価するKPI
- パートナーシップを終了する条件
アフィリエイトやインフルエンサーを活用する場合は、広告表記のルールなどもあらかじめ共有しておくことが重要です。
3. 複数のマーケティングチャネルを連携させる
マーケティング効果を高めるには、パートナーとの施策を単発のSNS投稿だけで終わらせず、ECサイト、メール、SNS、実店舗、イベントなど複数のチャネルを組み合わせることが重要です。
たとえば共同商品を販売する場合、双方のSNSで告知するだけでなく、メールマーケティングや特設ページ、店舗での展示などを組み合わせることで、顧客がキャンペーンを目にする機会を増やせます。
デジタルマーケティングと実店舗での施策を組み合わせる場合も、使用する画像やメッセージ、キャンペーン期間などをそろえ、どのチャネルでも一貫した顧客体験を提供することが大切です。
4. 成果を共有して改善する
パートナーマーケティングでは、施策を実施して終わりにせず、双方で成果を確認する仕組みを作ることが重要です。目的に応じて次のような指標を設定し、成果を評価します。
- パートナー経由のサイト訪問数
- 新規顧客数
- 売上や注文数
- アフィリエイトリンクのコンバージョン率
- キャンペーン専用に作ったクーポンコードの利用数
- SNS投稿のリーチやエンゲージメント
- メール登録者数
- メディア掲載数
施策の途中でも定期的に情報を共有し、成果が出ている方法にリソースを集中させたり、反応が低い施策を変更したりすることで、パートナーシップを継続的に改善できます。
まとめ
パートナーマーケティングでは、企業やクリエイター、団体などと協力することで、自社だけでは接点を持ちにくい顧客にアプローチしたり、互いのリソースを活用したりできます。
アフィリエイト、インフルエンサーマーケティング、共同ブランディング、販売提携など選択肢はさまざまです。まずは、ブランド認知の向上、新規顧客の獲得、販路拡大など、パートナーとの取り組みで達成したい目標を明確にしましょう。
そのうえで、自社と価値観やターゲット層が合い、互いの強みを補完できるパートナーを選ぶことが重要です。役割や条件、成果指標についても事前に共有し、実施後のデータをもとに改善を続けることで、双方にとって価値のあるパートナーシップを構築できます。
パートナーマーケティングに関するよくある質問
パートナーマーケティングで提携できる相手は?
企業だけでなく、クリエイター、インフルエンサー、販売店、NPO、地域団体など、さまざまな相手と提携できます。自社にない顧客基盤や専門性、販売チャネルなどを持ち、互いに価値を提供できる相手を選ぶことが重要です。
パートナーマーケティングの相手はどう探す?
SNSや業界イベント、取引先などから候補を探すほか、アフィリエイトの場合はASPを利用して提携先を募集する方法もあります。
パートナーマーケティングを成功させるポイントは?
ターゲット層や価値観が合うパートナーを選び、目的や役割分担、費用、成果指標などを事前に決めることが重要です。実施後は売上や新規顧客数、サイト流入などを確認し、施策を改善していきます。




