Shopify Japanは2026年11月5日、東京・恵比寿のEBiS303にて、日本のコマース業界の意思決定者に向けたフラッグシップイベント「Shopify Connect Tokyo 2026」を開催しました。
今年のテーマは「Build the Future of Commerce, Today / コマースの未来を、今日から作る」。AIエージェント、商品発見の変化、複雑なコマース基盤の移行、国内外ブランドの成長事例、そして日本市場ならではのエコシステム連携をテーマに、国内外のマーチャント、パートナー、Shopifyチームが実践知を共有しました。
AIは、もはや業務効率化のためだけのツールではありません。消費者はAIに相談し、商品を見つけ、比較し、購入を検討するようになりつつあります。企業に求められるのは、AIを「使う」ことだけではなく、AIから見つけられ、正しく理解され、購入につながる状態を作ることです。
本記事では、Shopify Connect Tokyo 2026で語られた主要テーマと、各セッションの内容を紹介します。
KEYNOTE:AI時代に選ばれるブランドのための成長基盤
オープニングキーノートでは、Shopify Japan代表の馬場 道生が登壇し、「AI時代に選ばれるブランドのための成長基盤」をテーマに、AI時代のコマース変化と、その変化に対応するためのShopifyの優位性を語りました。
馬場はまず、コマースの変化が加速していることを示しました。1995年にEコマース、2010年にモバイルコマース、2019年にソーシャルコマースが広がり、そして2026年にはAIエージェントを介した「エージェンティック・コマース」が始まっています。新しい購買チャネルが主流になるまでの期間は、15年、9年、7年と短くなっており、企業に求められる対応スピードも高まっています。
AIがコマースにもたらす変化として、業務効率化と生産性の向上、パーソナライゼーションの加速、そして購買行動そのものの変革が挙げられました。AIエージェントが顧客の代わりに情報収集、比較、購入、決済までを支援するエージェンティック・コマースは、McKinseyによると2030年までに世界で最大5兆ドル規模の商取引に関わる可能性があると紹介されました。
日本でも変化はすでに始まっています。Shopifyが2026年7月に実施した調査では、買い物の際にAIツールを「時々」以上の頻度で利用すると回答した消費者は全体で24%、25〜34歳では44%に達しました。また、日本の消費者の61%が、最終的な購入手続きは自分で行うことを前提に、AIがカートに商品を追加することに抵抗がないと回答しており、この割合は調査対象9市場で最高でした。
Shopifyのデータでも、AI経由のトラフィックと注文は前年比で約3倍に伸びています。AI経由の訪問者は、従来チャネルと比較してコンバージョン率が約1.5倍、平均注文単価も14%高いと紹介されました。さらに、AI経由の購入の75%が上位100カテゴリー以外で発生しており、「有名だから見つかる」だけではなく、「自分に合っているから選ばれる」世界が広がっていることが示されました。
一方で、企業に求められるのは、AIツールを導入することだけではありません。馬場は、日本企業のAI導入意向が92%に達する一方、実際の活用はコンテンツ生成やデータ分析など業務効率化が中心であると指摘しました。次の課題は、AIを「知る・作る」から「売る・届ける」へつなげることです。AIから見つかり、理解され、購入につながる状態をつくるには、正確で統合された商品、在庫、注文、顧客、決済データが不可欠になります。
この文脈で、Shopifyは単なるオンラインストア構築ツールではなく、あらゆる顧客接点で販売できる「コマースのオペレーティング・システム」として位置づけられました。オンラインストア、実店舗、B2B、SNS、マーケットプレイス、海外展開、AIチャットなど、顧客接点が増えても、商品、在庫、注文、顧客、決済を一つの基盤で扱えることが、AI時代におけるShopifyの大きな優位性です。
その優位性は、市場データにも表れています。IDCの「2025年 世界デジタルコマース市場シェア調査」では、Shopifyは世界市場シェア第1位となり、Salesforce、Oracle、SAP、Adobeの4社合計を上回るシェアを獲得しています。さらに、市場全体の成長の42%をShopifyが創出していることも紹介されました。日本においても、Shopifyは約3.3兆円規模の経済効果と15万人の雇用を支えているとされ、企業の成長と市場全体の発展を支えるコマース基盤としての存在感が示されました。
馬場は、Shopify上のブランドが持つ構造的優位性を3つに整理しました。1つ目は、商品、在庫、注文、顧客、決済を一つの基盤で扱える「コマースOS」であること。2つ目は、Shopify CatalogやShop Pay、Shopの購入者ネットワークが生み出す、コマースにおける最大級のネットワーク効果です。Shopify Catalogには10億点以上の商品情報があり、Shop Payには4億人以上の購入者ネットワークがあります。商品を一度公開するだけで、AI回答、モール、ソーシャルなど新しい接点へ展開できることは、AI時代の商品発見を支える重要な基盤になります。3つ目は、年間2,500億円以上の研究開発投資に支えられたイノベーションの速度です。
さらに、ShopifyがGoogleと共同で開発したUniversal Commerce Protocol(UCP)やWebMCPも紹介されました。UCPは、AIエージェントが商品を発見し、カートに入れ、決済へ進むための共通言語です。WebMCPにより、AIエージェントはWebサイトを人間のように読むだけでなく、構造化された情報を通じてShopifyストアの商品や機能を理解し、操作できるようになります。AIとの会話そのものが新しい売り場になる時代に、マーチャントがAIごとに個別の仕組みを構築するのではなく、Shopifyを通じて新しい販売機会へ素早く対応できることが強調されました。
また、Canvas、Sidekick、SimGym、Shopify Inboxなど、Shopifyのプラットフォーム全体に組み込まれたAI機能も紹介されました。ストア構築、集客、運営、接客、改善まで、コマースのあらゆる工程にAIが入り込み始めています。Sidekickは、調査、計算、コード作成まで支援し、CanvasはAIとの対話を通じてストア体験の改善を支援します。SimGymはAIがお客様になりきってストアを回遊し、改善点を発見します。
キーノートの最後に馬場は、今年のテーマである「Build the Future of Commerce, Today / コマースの未来を、今日から作る」へとメッセージを接続しました。AI時代のコマースは、遠い未来の話ではなく、すでに始まっている新たな成長機会です。だからこそ、未来の変化を待つのではなく、今日のシステム選定、データ統合、商品情報の整備、運用改善、AI活用の一つひとつを通じて、自社のコマースの未来を作り始めることが重要です。Shopifyは、その「今日から始める」ための基盤として、コマースOS、ネットワーク効果、イノベーションの速度を提供していることが示されました。
Professional Services:複雑な課題を、成長に変える
続いて、Shopify Director, EnterpriseのEduardo Friasが登壇し、「Shopifyはお客様の複雑なコマース課題をどう解決するのか」をテーマに、Shopify Professional Servicesの役割を紹介しました。
大規模なEC基盤の刷新やShopifyへの移行を検討する企業にとって、「本当に自社の複雑な要件に対応できるのか」は大きな不安です。複数ブランド、複数地域、POS、税務、ロイヤルティ、フルフィルメント、データ、外部パートナーなどが関わるプロジェクトでは、単にサイトを立ち上げるだけでは不十分です。
Professional Servicesは、Shopify社内の専門チームとして、アーキテクチャ設計、カスタム開発、移行支援、パフォーマンス改善、コンバージョン最適化などを通じて、複雑なコマース課題に向き合います。ローンチ前の導入計画や移行戦略だけでなく、本番公開後のSEO、GEO、コンバージョン率最適化、サイトパフォーマンス改善まで、マーチャントのニーズに応じた支援を提供しています。
セッションでは、Estée Lauder CompaniesのMACローンチ事例が紹介されました。これは単一サイトの立ち上げではなく、ブランド、市場、システム、パートナー、小売チャネルを横断する大規模変革の一部でした。約50以上のショップ、14以上のワークストリーム、7社以上のパートナーが関わる中、Shopify Professional Servicesは、ローンチの運用モデルを「管理可能」「測定可能」「再現可能」にする支援を行いました。
その結果、MAC USのECサイトはロールバックなしでローンチし、ハイパーケアも無事に終了。さらに、このローンチモデルはClinique、MAC UK、Jo Malone、Estée Lauderなど、今後のポートフォリオ展開にも活用される基盤となりました。
日本企業の事例としては、Relive、メビウス製薬、日清食品の取り組みも紹介されました。Reliveでは主要ページのLCPが50%以上改善し、90%のユーザーが2.5秒以内にメインコンテンツを表示できるようになりました。変更後90日間でコンバージョン率は3%増加、直帰率は6%減少、セッションあたりのページビュー数は9%増加しました。
メビウス製薬では、サブスクリプションと後払い決済を組み合わせた日本市場固有の要件に対応。Shopify、パートナー、決済プロバイダーが一体となり、顧客維持率は約2倍、広告CPAは約半減、システムコストは約3分の1、運用コストは約5分の1まで削減されました。
日清食品では、複数のECサイトやサブスクリプションを単一のShopifyストアに統合。移行決定からわずか4ヶ月でプラットフォーム移行を完了し、移行後にはGMVが166%、セッション数が151%、リピーター数が154%増加したと紹介されました。
Eduardoは、複雑なコマース課題は、明確に定義し、適切な専門知識をもって取り組めば解決できると強調しました。移行、統合、パフォーマンス、成長のいずれの課題であっても、早期に相談し、実行可能な計画に落とし込むことが重要です。
Tech Update:AI時代の顧客体験とビジネス成長を支えるコマース基盤
テックアップデートでは、Shopify Japan Lead Solution Engineer, Partner Successの岡村 純一が登壇し、「成長を動かすコマース基盤」をテーマに、最新プロダクトと技術アップデートを紹介しました。
成長するほど、コマース運営は複雑になります。顧客接点は、自社EC、店舗、Shop、卸、海外、AIへと増えていきます。一方で、購入時の入力の手間、販路ごとの情報分断、増え続ける手作業が残ると、成長するほど運営負荷が高まり、顧客体験の改善に使える時間が減ってしまいます。
岡村は、Shopifyの最新アップデートを「売上と運用を一緒に改善するための基盤」として紹介しました。
まず、CheckoutとShop Payです。Shopify Checkoutは競合比較でコンバージョン率が平均15%、最大36%高いとされ、Shop Payの利用者は世界で4億人を超えています。購入時の入力負担を減らすことは、集客を売上につなげるうえで重要です。
ShopアプリとShop.comについても紹介されました。Shopは配送状況を確認するアプリであると同時に、新しい商品との出会いをつくる接点です。Shopアプリは日本語でも利用可能となり、Shop.comではウェブ上でも商品の発見から購入まで進みやすくなっています。
さらに、端末をまたいだカート連携、Shop上で複数ブランドの商品をまとめて購入できるUniversal Checkout、購入後の配送確認やブランドフォロー、新しいお客様アカウントによるセルフサービス体験など、購入前後の体験を一貫して支える機能が紹介されました。
運用面では、POS、B2B、Markets、Flow、Sidekick、Canvasなどが取り上げられました。Marketsでは海外展開を少人数で進めやすくし、B2Bでは卸の受注業務を効率化できます。Shopify Flowは繰り返し業務を自動化し、Sidekickは分析、計算、ウェブ調査、施策準備までを支援します。Canvasではストア全体を一つのキャンバスで見渡し、Sidekickと相談しながら改善を進められます。
最後に、AI時代への準備として、WebMCPとCatalogが紹介されました。AI経由の買い物では、正確な商品情報、在庫、価格、配送条件が返り、購入から注文管理、配送までつながることが重要です。新しい接点だけを用意しても、商品や運用の情報が古ければ、体験は続きません。
楽天リーベイツ × Shopify:公式ECの新規顧客獲得と売上の山づくり
楽天グループ株式会社 楽天リーベイツ(Rebates)Sales & Marketing Section Senior Managerの清宮 雄太氏と、Shopify Japan Head of Salesの香山 克彦によるセッションでは、「楽天リーベイツ × Shopify:楽天経済圏とコマースの可能性を語る」をテーマに、ブランド公式ECの成長に向けた新しい選択肢が紹介されました。
セッションでは、AI時代にもなお日本の買い物を動かす「ポイント」「買い回り」「季節イベント」という購買習慣に着目し、公式ECの新しい成長機会が語られました。初売り、セール、おせち特集のような季節イベント、複数のお店をまわってポイントを貯める買い回り、日常の買い物で貯めたポイントを次の購入に使う習慣など、日本では「楽しみながら賢く買う」行動が購入のきっかけをつくっています。
自社ECが一定規模を超えると、課題は大きく2つに分かれます。平常時には、広告単価が上がる中で、購買意欲の高い新規顧客をどう獲得するか。イベント時には、周年祭、新作発売、初売りなどで、値引きに頼らず売上の山をどう作るかです。
楽天リーベイツは、会員数1,000万以上、掲載ストア1,000以上を持つキャッシュバックサービスで、会員の約8割が高ランクユーザーです。楽天市場とは異なる接点として、ブランド公式ECへ購買意欲の高いユーザーを送客できる可能性があります。
また、楽天リーベイツはストア掲載型から商品掲載型へと進化し、AIによるユーザーと商品のマッチングを通じて、ブランド名をまだ知らない顧客にも商品起点で出会う機会を広げています。総合通販A社の事例では、商品掲載開始後、検索経由の媒体新規購入者が900%超増加したことも紹介されました。
セッションでは、成果を見る際には目的ごとに指標を分けることが重要だと説明されました。平常時の新規顧客獲得では、新規顧客数、購入率、客単価を含めた獲得効率を見る。イベント時の売上の山づくりでは、期間中の売上の伸び、既存・休眠顧客の来訪と購入を見る。楽天リーベイツは、AI時代にも日本の買い物を動かす「ポイント」という仕組みを活用しながら、公式ECの新規顧客獲得と売上創出を支援するチャネルとして紹介されました。
TSIが語る、大型移管から1年半のリアル
株式会社TSI IT推進部 部長の高木 耕介氏、デジタルプラットフォーム部 副部長の牧 由佳子氏、Shopify Japan Senior Merchant Success Managerの森谷 知弘が登壇し、「TSIが描く、ファッションECの次の成長戦略〜システム活用から、事業成長を支えるコマース基盤へ〜」をテーマに、Shopify移行から約1年半が経過した現在地が語られました。
TSIは2025年2月、mix.tokyoをShopifyへ移行しました。複数ブランドを抱えるTSIでは、M&Aを通じた成長の結果、サイトや運用が個別最適化され、コスト増大、オペレーション重複、CRM分断といった課題が生まれていました。移行前は、ブランドごとに異なる制作会社と相談しながら個別に実装しており、同じような仕組みや改善を別々に作っていたといいます。
移行プロジェクトは11ヶ月という短期間で進められました。先にカットオーバー日を決め、その時点で持っていけるものを優先し、残りは走りながら改善していく方針を取りました。大型移管は容易ではなかったものの、結果として年間5億円のコスト削減を実現し、全社的な営業利益率の改善にも貢献したと紹介されました。
一方で、移行後すぐにすべてが順調だったわけではありません。特に大きかったのは、移行時に顧客移行を行わなかったことです。10以上あるCRMを統合するには約2年かかる見込みだったため、期限内に確実に切り替えることを優先し、まずは既存業務を止めずに運営することに集中しました。そのため、移行直後は思うように売上が伸びない時期もありました。
しかしその後、元々の顧客が戻ってきたことや、実店舗スタッフの協力もあり、顧客数は以前よりも増加。今期は対前年比で各指標がプラスに推移していることも共有されました。
現場からは「自由度が減った」「今までできていたことができない」「ブランドの世界観が出しにくい」といった声もありました。TSIはこの経験を通じて、従来の仕組みをそのままShopifyで再現するのではなく、Shopifyだからできることを理解し、社内に広めていく必要性に向き合っています。
セッションでは、Shopifyの売上直結系機能やマーケティング・業務改善系機能の多くが、まだ一部利用または未利用であることも率直に共有されました。これは「使えていない」ことを責める話ではなく、移行時に期限内に確実に切り替えることを優先した結果です。Flow約80個やディスカウントなど利用しているものもある一方、ストアの移行は完了したものの、新しい販路や売り方、AI時代の運営を支える機能の活用はこれからのテーマです。
重要なのは、こうしたShopifyの機能をまだ十分に使い切れていない段階でも、EC売上と全社営業利益が対前年比で伸びている点です。つまり、Shopifyへの移行は、すべての機能を活用しきった後に初めて成果が出るものではなく、まず共通基盤へ移行し、コスト構造と運営体制を整えるだけでも経営インパクトを生み得ることが示されました。そのうえで、TSIにとって次の成長余地は、まだ未利用の機能をどう業務と顧客体験に組み込んでいくかにあります。高木氏は「システムの移行は終えたけれど、運営の移行はまだ途中」と表現しました。
今後TSIが目指すのは、AIを既存業務に後付けするのではなく、AIがある前提で業務を組み立て直す「AI-native Operation」です。商品情報を整え、AIの顧客フィードバックを受け、ページを修正し、A/Bテストを行い、結果を分析し、良いものを自動化していく。個別の便利なツールで終わらせず、一連の改善サイクルとして運営に組み込んでいく考え方です。
TSIが持つ複数ブランドの強みは、AI時代においても新たな価値につながります。顧客の趣味、ライフステージ、体型が変わっても、グループ内の別ブランドが次のニーズに応えられるかもしれません。TSIは、ブランド間のクロスユースを単なる併売ではなく、顧客との関係を長く続けるための成長戦略として捉えています。さらに、M&Aによって事業規模が拡大していく中でも、顧客に喜ばれる商品を届け、バックエンドでは生産性と効率を高めるという基本姿勢は変わらないと語られました。
OpenAI Special Session:AIが変える商品発見とショッピング
OpenAIのLorry Destainville氏によるSpecial Sessionでは、「Agentic Commerce Solutions on ChatGPT:AIが変える商品発見とショッピング」をテーマに、AIが消費者の購買行動をどのように変えているのかが語られました。
日本でも、AIを使った商品リサーチはすでに行われています。OpenAIのデータでは、2025年11〜12月のChatGPTにおける商品検索アクティビティは、同年10月のベースラインと比較して1日平均で47%増加しました。また、Shopify Japanの調査では、日本の消費者の52%がホリデーの買い物で少なくとも1つの作業にAIを使う可能性が高いと回答しています。
ChatGPTには毎週12億人が訪れ、ユーザーは学習、計画、問題解決、相談、意思決定など、さまざまな目的を持って会話しています。買い物関連のChatGPT会話の約43%では、選択肢の比較・評価が行われており、顧客は会話を通じてニーズを明確にし、利点と注意点を比べ、次の行動を選んでいます。
セッションでは、消費者が買い物の作業をAIに任せる流れを、3つの段階で整理しました。
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Advise:選択肢や違いを理解する
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Prepare:候補を絞り、カートや質問を準備する
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Act with permission:本人の許可を得て行動する
重要なのは、どの段階でも主導権は人にあるという点です。AIが支援する範囲が広がっても、消費者が何を許可し、どの情報が使われ、次に何が起こるのかを理解できることが重要です。
Lorry氏は、AI時代にマーチャントが強みを発揮するためのフレームワークとして「Fit / Proof / Reliability」を紹介しました。
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Fit:商品が顧客のニーズに合っているか
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Proof:仕様、レビュー、画像、説明など、判断に必要な根拠があるか
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Reliability:在庫、配送、返品、サポートなど、約束を守れるか
たとえば、箱根で初心者向けのハイキングブーツを探している顧客の場合、AIは単に「ハイキングブーツ」という商品名ではなく、初心者向けのコース、快適性、重量、天候、配送、返品条件など、購入判断に必要な情報をもとに候補を整理します。マーチャントに求められるのは、商品価値を人にもAIにも伝わる形で整えることです。
また、Shopify App StoreでChatGPT Appが日本でも利用可能になり、ShopifyマーチャントがChatGPT上の新しい顧客接点に向けた取り組みを始められるようになったことも紹介されました。
Shopify Bridge:AIエージェント時代に、日本のマーチャントが今から準備すべきこと
OpenAIのセッションを受けて、Shopify Japan Lead Solution Engineer, Partner Successの岡村 純一が登壇し、「Shopify Bridge:AIエージェント時代に、日本のマーチャントが今から準備すべきこと」をテーマに講演しました。
Shopifyの公開データでは、2026年第2四半期のAI検索経由の注文数は前年同期比で約3倍になっています。商品との出会いがAIにも広がり、実際の注文につながり始めています。
岡村は、マーチャント側が整えるべきこととして、用途、悩み、条件から見つけてもらえる商品情報と、価格、在庫、配送条件が正しく伝わる購入基盤を挙げました。
セッションでは、AIエージェントが商品を探し、比較し、購入へ進むデモも紹介されました。商品・価格・在庫を扱うCatalog、配送・返品・FAQなどを補うKnowledge Base、取引をつなぐUCP、そしてマーチャントが共有情報や販売状況を管理するAgentic Storefronts Dashboardが、それぞれの役割を担います。
Fall ’26 Editionsで紹介されたshop.mdも取り上げられました。これは、外部AIエージェントがShopのカタログや好みの情報を使って買い物を支援するためのスキルです。さらに、Shop Payを個人のAIエージェントに組み込み、買い手が購入内容を承認して支払う体験へと進化していることが示されました。
公開事例としては、Cottoniqueが紹介されました。肌への刺激に悩む顧客に対して、素材や製品特徴がAI経由で伝わることで、AI経由売上が前年比276%増加したと紹介されました。商品名を知らない顧客でも、悩みや用途から商品と出会える可能性が広がっています。
岡村は、今日からできる準備として、まず主力商品を1つ選び、素材、サイズ、用途、選び方、FAQ、価格、在庫、配送地域、送料、返品条件を確認することを提案しました。AIに商品が表示されることだけでなく、AIチャネルからのセッション、注文、売上を見ながら改善していくことが重要です。
Gymsharkに学ぶ、AI時代のグローバルブランド戦略
英国発のグローバルD2CブランドGymsharkのセッションでは、Director of EngineeringのDan Blundell氏と、Shopify Office of the PresidentのGleb Vaguineが登壇し、急成長ブランドがどのようにコマース基盤を整え、AI時代の成長に備えているかを紹介しました。
Gymsharkは2012年に創業したフィットネスアパレルとコミュニティのブランドです。SNS、フィットネスクリエイター、コミュニティとの直接的な関係を通じて成長し、グローバルブランドへと拡大してきました。
成長に伴い、ピークトラフィック、サイトの安定性、スピード、柔軟性、グローバル運営といった課題が生まれました。Magento時代には、BFCMなどのピーク時における停止リスクや、売上機会の損失、運用不安が大きな課題でした。
Shopify Plusを選んだ理由は、グローバルで成長するブランドに必要な安定性とスケーラビリティを提供できることです。移行後、Gymsharkは「サイトが落ちないか」という不安から解放され、安定性、スピード、コンバージョン、グローバル展開、成長施策、顧客体験改善により集中できるようになりました。
AI時代においても、この安定したコマース基盤は重要です。AIやエージェンティックな顧客体験は、単なるバックオフィスの生産性向上ではなく、商品発見、意思決定、サービス、運用の一部になっていきます。新しい体験を安全かつ素早く試すためには、土台となるプラットフォームが安定している必要があります。
Gymsharkの事例は、日本のマーチャントにとっても、テクノロジー選定、組織運営、実験、スケールの観点から大きな示唆を与えるものとなりました。
BONAVENTURAに聞く、ブランド成長とAI活用のリアル
最後のマーチャントセッションでは、BONAVENTURA Global Tech Leadの田畑 正大氏と、Shopify Senior Customer Success Managerの押切 啓介が登壇し、「BONAVENTURAに聞く、ブランド成長とAI活用のリアル」をテーマに、AIと自動化が日々の運営と投資配分をどう変えているかが語られました。
BONAVENTURAは、ヨーロッパ最高級のレザーを使用し、シンプルでタイムレスなデザインのスマホケース、財布、ハンドバッグなどを展開するブランドです。豊富なカラーバリエーションも特徴で、SKUは累計で約1万5,000まで拡大しています。Shopify移行直後は約2,000 SKU規模だったことを踏まえると、5年間で商品展開も大きく広がりました。公開事例では、5年でGMVが約10倍に成長したことも紹介されています。
BONAVENTURAは国内外に34店舗を展開し、ミラノ、タイ、台湾、香港などにも拠点・エリアを広げています。
Shopify Plusへ移行した背景には、アクセス集中によってサイトや管理画面がダウンし、販売機会、注文状況の確認、顧客対応に影響が出ていたという課題がありました。加えて、機能を追加しようとしたときの開発のしにくさや拡張性の不足も課題でした。Shopify Plusへの移行後は、安定性、グローバル対応、内製化を進め、EC3名、IT3名という少人数体制で自走できる基盤を構築しています。
セッションで強調されたのは、AI時代のツール選定では、単なる機能比較ではなく、ツールがどこまで業務を担えるかを見るべきだという視点です。これまでは、ツールを導入しても、そのツールを扱うための人が必要でした。一方、AIエージェントを組み込んだプラットフォームでは、途中のプロセスをエージェントが担い、人は最終判断や例外対応に集中できます。ツール費だけでなく、人件費や運用費まで含めて投資対効果を見ることが、AI時代のベンダー選定では重要になります。
BONAVENTURAでは、SidekickとShopify Flowを活用し、日々の運営と購入後の顧客接点を仕組み化しています。150以上のFlowを運用しており、その約2割はSidekickで作成されています。顧客セグメント、注文リスク検知、購入後アンケート、修理案内など、さまざまな業務が自動化されています。
以前は1〜3日かかっていたような自動化の作成が、Sidekickの活用により短時間で実現できるようになっていることも語られました。重要なのは、自分だけの生産性向上で終わらせるのではなく、チーム全体が使える仕組みにすることです。
また、AI ToolkitとClaude Codeを活用し、お気に入り機能、検索、マイページ・ログイン、入荷通知、店舗在庫表示など、外部アプリに頼っていた領域を自社アプリへ置き換える取り組みも紹介されました。
田畑氏は、AI時代の投資・ベンダー選定方針として、次の3点を挙げました。
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ツール導入時の機能比較だけで判断しない
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専門知識、意思決定、業務実行まで提供してくれるサービスを優先する
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AIによって生まれた余力を、次の成長に再投資する
最後に、BONAVENTURAが進めているAgentic Commerceへの備えとして、商品情報とブランド情報をAIが理解できる形に整える取り組みが紹介されました。素材、カラー、対応機種、保証、ケア方法、FAQなどを構造化し、AIが正しく理解・比較できる状態を今日から整えています。
田畑氏は、AIに理解されるための準備として、商品スペックを整えるだけでは不十分だと説明しました。顧客が本当に知りたいのは、商品がいつ届くのか、誕生日に間に合うのか、店舗受け取りができるのか、返品条件はどうかといった購入判断に直結する情報です。店舗やカスタマーサポートが日々受けている質問の答えを、商品情報やFAQ、ナレッジベースに反映することが、AI時代の接客品質につながります。
AIに買い物を任せる時代に向けて、BONAVENTURAは次の3つを準備しています。
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接客の答えを商品情報に反映する
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在庫、配送日数、受取方法、返品条件を正確に保つ
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実際にお客様の言葉でAI検索し、誤りや不足を確認する
「店頭で伝えていることを、AIにも伝えられているか」。この問いは、AI時代のすべてのブランドにとって重要な視点となります。
Milestone Award
イベントの終盤には、Shopify上で大きな成長を遂げたマーチャントを称えるMilestone Awardの授賞式が行われました。
Shopify Milestone Awardは、累計注文数の節目を達成した事業者を称える認定プログラムです。今回のアワードでは、対象となるマーチャントの皆さまへGold Trophyが贈呈されました。
日本のEC事業者が今日から始められること
Shopify Connect Tokyo 2026を通じて見えてきたメッセージは明確です。AI時代のコマースは、いつか来る未来ではありません。すでに始まっています。
日本のEC事業者が今日から始められることは、次の5つです。
1. 主力商品を1つ選び、AIに理解される情報を整える
商品名だけでなく、素材、サイズ、用途、選び方、利用シーン、対応機種、FAQ、レビュー、ケア方法などを整理しましょう。商品を知らない顧客が、悩みや目的から見つけられる状態を作ることが重要です。
2. 価格、在庫、配送、返品条件を正確に保つ
AIが商品を推薦しても、在庫や配送条件が不正確であれば購入にはつながりません。価格、在庫、配送地域、送料、返品条件を最新に保つことは、AI時代の購買体験の前提です。
3. AI経由の顧客行動を想定して検証する
顧客がAIにどのような言葉で相談するかを考え、実際にAIで検索してみましょう。商品が見つかるか、特徴が正しく伝わるか、購入条件に不足がないかを確認することが第一歩です。
4. 日々の業務を1つ自動化する
最初から大きなAIプロジェクトを始める必要はありません。毎週時間がかかっている業務を1つ選び、判断条件や例外対応を整理してみましょう。FlowやSidekickのような仕組みを活用することで、改善に使える時間を増やせます。
5. コマース基盤を、成長と変化に耐えられる形にする
AI時代には、顧客接点がさらに増えていきます。自社EC、店舗、B2B、海外、Shop、AIチャネルを別々に管理するのではなく、商品、在庫、注文、顧客、決済を一つの基盤で扱える状態を作ることが重要です。
コマースの未来は、今日の意思決定から始まる
Shopify Connect Tokyo 2026で語られたのは、AI時代のコマースにおいて成長するブランドに共通する姿勢です。
それは、変化を待つのではなく、今日の意思決定と実行を通じて未来の準備を始めることです。
AIに理解される商品情報を整える。データを統合する。運用を自動化する。購入体験を改善する。複雑な移行や成長課題を、実行可能な計画に落とし込む。
これらはすべて、未来のための準備でありながら、今日の売上、効率、顧客体験にも直結します。
AI時代のコマースで選ばれるブランドになるために、まずは一つ、自社で見直すべき商品、業務、顧客体験を決めることから始めてみてください。
コマースの未来は、今日の一歩から作られます。




