Shopifyでは、 決済時の不正利用を防ぐ「3Dセキュア」をShopifyペイメントに導入したことで、加盟店に様々なメリットをもたらしました。
2025年1月、Shopifyでは、インテリジェントなシステムによって3Dセキュアを求めるべき取引を判定する「事前承認モデル」を試験的に導入しました。その結果、決済成功率が0.26%(26ベーシスポイント(bps))向上し、クレジットカード会社が不正利用と見なすチャージバックが20%(41bpsから8bpsに改善)減少しました。
Shopifyが仮に2024年にこのモデルを実装していた場合、決済成功率の向上とチャージバックの抑制により、年間で約4億7100万ドル(約750億円)もの決済総額を得ていたことになります。また、チャージバックの減少にともない、削減できた直接的なコストは、約6,200万ドル(約99億2千万円)と推計されています。
Shopifyではこの結果を受け、Shopifyペイメントを利用するすべての加盟店に3Dセキュアを導入しました。これにより、「セキュリティ対策を強化すると、顧客の手間が増えてコンバージョン率が低下する」という従来の業界の常識をくつがえすことに成功したのです。
この記事では、3DセキュアをShopifyペイメントに実装することで、セキュリティ強化と決済成功率の向上がどのように両立するかを詳しく解説します。3Dセキュアの実装は、高度な不正利用対策によりEC事業者の利益を最大化させます。その結果、AVS(住所確認システム)の認証に失敗した決済を一律に拒否する、といった従来の静的なルールによる決済承認の手間を省くことができます。

3Dセキュアとは
3Dセキュア(正式名称:EMV® 3-D Secure) とは、近年急増しているクレジットカードの不正利用を防ぐために、各国際ブランドが提供する本人認証サービスの仕組みです。
3Dセキュア認証のプロセスでは、決済時に必要なクレジットカード番号と有効期限、セキュリティコードに加え、ワンタイムパスワードや顔認証、指紋認証などの追加認証を行います。
3Dセキュアが導入される背景
近年では、ECサイトでのクレジットカード不正利用が急増しており、 2025 年の被害額は 510.5 億円という高い水準となっています。そのため、経済産業省では、2025年4月までにすべてのEC加盟店に3Dセキュア2.0を導入するよう義務づけました。
海外オンライン販売でのセキュリティ強化
欧州経済地域 (EEA) のすべての国および英国では、2019年に改訂版決済サービス指令(PSD2)が施行されました。PSD2では、不正注文のリスクを低減するため、電子決済に対する「強固な顧客認証(SCA)」の適用を義務づけています。このSCAの対応手段として、多くの場合に3Dセキュアが使われています。現在では米国やアジア圏でも、セキュリティ対策として3Dセキュアの導入を求めるカード会社が増えています。
Shopifyペイメントで3Dセキュア導入
Shopify独自の決済サービス「Shopifyペイメント」を有効にすると、追加の設定なしで3Dセキュアが自動的に機能します。Shopifyペイメントでは、機械学習を用いた不正取引検知によって取引のリスクを評価し、必要に応じて3Dセキュアの認証を求めます。この仕組みにより、不正利用の防止と決済成功率の両立を図っています。

従来の不正対策の課題
決済業界では長年、「コンバージョン率」と「セキュリティ」はトレードオフの関係にあり、両立は難しいと考えられてきました。しかし、Shopifyペイメントでは、正当な取引を妨げることなく、不正利用を効果的に遮断するアプローチを採用しています。
決済代行会社での審査において、事業者は「より多くの取引を承認する代わりに不正利用のリスクを受け入れる」か、「厳格なセキュリティ対策を導入する代わりに正当な顧客の購入離脱を容認する」か、どちらかの二者択一を迫られてきました。
こうした二者択一の状況は、いずれを選択しても、以下のような売上低下の要因につながります。
誤拒否(フォールスデクライン)によるコスト発生
AVS認証に失敗した取引を機械的に拒否するといった静的ルールによる「誤拒否」は、実際の不正被害以上のコストをEC事業者にもたらします。米国では、AVS認証の誤拒否により、年間で約4,430億ドル(英語サイト、約71兆円)もの機会損失が発生していると推定されています。
チャージバックによる損失
チャージバックは、単に売上を失うだけではありません。通常では、不正利用による損失が1ドル(約160円)発生するごとに、企業は関連手数料や運用コスト、ペナルティなどを含め、総額4.41ドル(英語サイト、約700円)ものコストを負担しなければならないとされています。こうした隠れたコストを考慮すると、最適化された3Dセキュアによる決済方法を活用した場合、1年間の実質コストで約2億7,300万ドル(約436億円)の損失を削減できると推計されています。
複雑な認証プロセスによる顧客の離脱
認証プロセスが複雑すぎると、顧客は購入を途中で断念してしまいます。それは、将来的な顧客生涯価値(LTV)までを低下させることになります。ある調査によると、カゴ落ちの18%(英語サイト)は複雑なチェックアウト体験に起因すると推定されています。
Shopifyは、加盟店の広範なエコシステム全体における大量の調査やテスト、最適化を積み重ね、独自の機械学習モデルを開発しました。このモデルでは、高リスクな取引に対してのみ3Dセキュアを適用するため、加盟店の重要な指標である「決済成功率の向上」と「チャージバックの削減」を同時に実現します。

Shopifyペイメント:最先端のイノベーションによる不正利用対策
Shopifyペイメントでは、業界水準を超えた最先端のアプローチで3Dセキュアを実装しています。数百万の加盟店と数十億件の取引データをもとに学習したShopifyの機械学習モデルを3Dセキュアと組み合わせることで、不正利用を高度に防ぎます。このモデルは、サイト訪問だけでなく、閲覧、カートへの追加、さらにチェックアウトに至るまでの購入プロセス全体を分析します。
3Dセキュアが有効なShopifyペイメントによる、顧客のオンライン購入の流れは以下の通りです。
- 加盟店のチェックアウトページでカード情報を入力します。
- Shopifyペイメントの機械学習モデルが、その取引を評価します。
- Shopifyのシステムにより、高リスクと判断された取引を3Dセキュア認証に回します。
- カード発行会社は、Shopifyのデータを活用しながら、自社のアルゴリズムを用いてその取引のリスク度を評価します。
- 評価結果に基づき、カード発行会社は次のいずれかを実施します。
- カード保有者に追加認証なしで取引を承認する(フリクションレスフロー)
- カード保有者に追加認証を要求する(チャレンジフロー)
この仕組みにより、不正利用の防止とコンバージョン率の維持を最適なバランスで実現します。

機械学習導入の成果
Shopifyでは、決済成功率を26bps向上させました。これは、加盟店がShopifyペイメントで3Dセキュアを利用しなかった場合、取引拒否により約4億7,100万ドル(約750億円)の売上損失が発生していた計算になります。
この成果の理由は、機械学習と3Dセキュアを高度に組み合わせたShopifyペイメントの仕組みにあります。Shopifyペイメントは、クレジットカード発行会社に対して決済承認のための明確な判断材料を送信します。これにより、クレジットカード発行会社が不正利用を確実にブロックしつつ、正当な注文を誤って拒否することなくスムーズに承認できるように支援しています。
Shopifyは、取引拒否によって失われていた可能性のある売上を取り戻しました。しかし、この成果は1回限りのものではありません。事業期間全体で換算すると、数十億ドル(数千億円)もの規模になります。

チャージバックを業界最高水準の20%削減
最適化された3Dセキュアが組み込まれているShopifyペイメントを利用する加盟店は、チャージバック率が8bps 低下することが確認されました。
この改善により、以下の要素を考慮すると、年間約6,200万ドル(約99億2千万円)の直接的な損失が削減され、実質コストベースでは約2億7,300万ドル(約436億円)の削減効果が生まれたことになります。
- 売上の直接保護:チャージバック確定による売上代金を防ぎます。
- 手数料の回避:発生ごとに課されるチャージバック手数料(日本国内:1件1,300円)を抑えます。
- 業務の効率化:異議申し立てが減り、スタッフの対応時間を削減できます。
- ペナルティの回避:チャージバック率を低く保ち、カードブランドの監視プログラムへの登録や、手数料引き上げを回避します。
Shopifyペイメントが継続的に不正検知や不正防止機能の最適化に取り組んできた結果、チャージバックを低減させるだけでなく、多大なコスト削減効果を生み出し、事業者の利益最大化に貢献しています。

決済認証の未来
今後の決済認証プロセスは、加盟店に「セキュリティか売上か」の二者択一を迫るものではありません。これからの主流は、その両方を高い次元で両立させるインテリジェントな仕組みへと進化していくでしょう。
Shopifyの包括的な不正分析には、AVSやCVV(カード確認コード)のデータがすでに組み込まれています。そのため、仮にAVSチェックを通過した取引であっても、高リスクと判断される取引を特定し、キャンセルすることが可能です。このような高度なリスク分析に基づくアプローチにより、堅牢な不正対策を維持しながら、正当な取引をより多く安全に承認できるようになりました。特に、AVSエラーが発生しやすい海外顧客やモバイルユーザーの決済において、高い効果を発揮します。
不正利用を懸念する加盟店にとって、最大の課題、認証率の向上とチャージバック率の低下をいかに両立させるかです。Shopifyの最適化された3Dセキュアは、これらの問題を同時に解決します。
まとめ
Shopifyの3Dセキュア実装は、承認率の向上による売上拡大と、不正利用の削減による利益率の保護に貢献し、その結果、加盟店の収益を拡大します。
- 3Dセキュアの実装により、決済成功率が0.26%(26bps)向上し、年間4億7,100万ドル(約750億円)の決済額を新たに生み出しました。
- 業界トップクラスのアプローチにより、チャージバック率を20%削減し、加盟店は年間約6,200万ドル(約99億2千万円)、実質コストで2億7,300万ドル(約436億円)を削減できました。
- 決済の最適化により、不正利用防止とコンバージョン最大化を両立させ、収益を確実に拡大します。
- 全体のエコシステムから得られるインテリジェンスにより、単独の決済代行会社では実現できないメリットを提供します。
- インテリジェントな3Dセキュアの導入により、従来のAVS確認は不要となり、誤拒否を減らしながらも、確実な不正利用の防止を実現します。
Shopifyペイメントは、最先端の決済ソリューションとして、EC事業者に高い価値を提供し続けます。




