EC事業を成長させるには、商品の保管や梱包、配送を担うEC物流だけでなく、仕入れから販売までの流れを把握する流通管理も欠かせません。しかし、事業の拡大に伴って仕入れ先や販売チャネルが増えると、関係する企業や各工程をまとめて管理することが難しくなります。
そこで重要になるのが、サプライチェーンマネジメント(SCM)です。本記事では、SCMの意味や重要性、基本的な仕組み、主な活用場面について解説します。代表的な4つのモデルも紹介するので、自社の商品や市場環境に合った管理方法を検討する際に役立ててください。

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料の調達から製造、在庫管理、物流、販売を経て、商品が消費者に届くまでの一連の流れを管理し、全体の最適化を図る経営手法です。SCMは「Supply Chain Management」の略称です。
この一連の流れには、原材料や部品の仕入れ先、メーカー、倉庫、配送業者、小売業者など、多くの企業や組織が関わっています。サプライチェーンマネジメントでは、こうした関係者と情報を共有して各工程を連携させるとともに、取引先との良好な関係を構築、維持します。
サプライチェーン全体を適切に管理することで、業務効率化や生産性向上、コスト削減が期待できます。また、商品の品質を保ちながら、必要な商品を適切なタイミングで消費者へ届けることにもつながります。

サプライチェーンマネジメントの重要性
サプライチェーンマネジメントが重要なのは、予期せぬ事態による供給停止のリスクを抑え、事業を継続しやすくするためです。
企業活動のグローバル化により、原材料の調達先や生産、物流の拠点は国内外に広がり、サプライチェーンも複雑化しています。実際に、コロナ禍では工場の停止や輸送の遅延により、原材料や部品の調達、商品の配送に影響が生じました。地震や台風などの自然災害、国際紛争によって、特定の地域や仕入れ先から調達できなくなる場合もあります。
SCMによって在庫や生産、物流の状況を可視化し、調達先や配送手段を分散することで、問題の早期発見と状況に応じた対応がしやすくなります。

サプライチェーンマネジメントの仕組み
1. 計画
最初に、顧客の需要と商品の供給量のバランスを考え、必要な在庫数や生産量を決めます。過去の販売データや市場動向を分析して需要を予測し、欠品や過剰在庫を防げるように在庫計画を立てます。
需要予測に応じて生産時期や生産量を決める生産計画に加え、必要な設備、人員、生産拠点などを確保するための能力計画も必要です。精度の高い予測と計画を立てることで、需要の変化に対応しながらコストを管理しやすくなります。
2. 調達
計画を立てた後は、商品に必要な原材料や部品を安定して仕入れるため、適切な仕入れ先を選定します。価格だけでなく、品質、供給能力、納期、信頼性、対応力などを総合的に比較することが大切です。
仕入れ先を決めた後は、価格や発注量、納期、支払い条件などについて交渉し、契約を締結します。継続的に情報を共有して良好な関係を築くことで、需要の増加や供給上の問題が発生した際にも協力を得やすくなります。
3. 製造
調達した原材料や部品を加工、組み立てし、完成した商品へと仕上げます。市場の需要に合わせて商品を安定的に供給するには、製造工程や作業日程、生産量を適切に管理しなければなりません。
商品の検査や品質管理を行い、定められた基準を満たしているか確認することも重要です。また、設備の故障による生産停止を防ぐための保守や、必要な技術を持つ人材の配置も製造プロセスに含まれます。
4. 配送
完成した商品は、顧客から受けた注文に応じて倉庫から出荷し、指定された場所へ届けます。そのためには、注文処理や倉庫での商品の保管、管理に加え、配送業者や輸送手段、配送ルートの選定も必要です。
商品の種類や注文数、配送先などを踏まえて物流を管理することで、配送にかかる時間やコストの削減につながります。商品を適切な状態で、必要な場所へ予定どおり届けることが配送プロセスの役割です。
5. 返品
顧客から商品が返品された場合は、返送された商品を受け取り、検品や返金などの返品処理を行います。ECでは、顧客が購入前に商品を直接確認できないため、返品の発生を想定して効率的な対応体制を整える必要があります。
返品処理では、商品の状態や返品理由を確認したうえで、修理、交換、リサイクル、廃棄などの対応を決めます。このように、商品を顧客から事業者側へ戻す流れは「リバースロジスティクス」と呼ばれます。

サプライチェーンマネジメントの主な活用場面
製造業における部品や原材料の管理
多くの部品や原材料を使用する製造業では、仕入れ先から工場、倉庫までの情報を連携させる際にサプライチェーンマネジメントを活用できます。部品の在庫数や納入状況を把握することで、生産の遅延につながる欠品のリスクを抑えやすくなります。
実店舗とECを運営する小売業の在庫管理
実店舗やECなど複数の販売チャネルを連携させるオムニチャネルでは、店舗や倉庫の在庫情報を一元管理する際にサプライチェーンマネジメントが役立ちます。ERP(統合基幹業務システム)や在庫管理システムなどを活用して、商品の保管場所や在庫数を把握できれば、注文に応じて適切な拠点から出荷したり、必要な拠点へ在庫を移動したりできます。
海外から商品や原材料を調達する事業
国際取引を通じて海外から商品や原材料を調達する場合、仕入れ先、生産拠点、輸送経路などが広範囲に及びます。サプライチェーンマネジメントを活用して各拠点の在庫や輸送状況を把握することで、納品の遅れなどを早期に確認し、仕入れ先や輸送経路の変更を検討しやすくなります。

サプライチェーンマネジメントの4つのモデル
1. 連続フローモデル
連続フローモデルは、原材料の調達から製造、配送までの流れを一定に保ち、効率性と供給の安定性を重視するモデルです。需要が安定しており、同じ工程で商品を継続的に生産、販売する企業に適しています。
安定した供給を続けるには、需要を正確に予測し、在庫数や生産量を適切に管理することが重要です。ERPなどを活用すれば、調達、在庫、生産、配送に関する情報を一元的に管理しやすくなります。
2. アジャイルモデル
市場や顧客ニーズの変化に応じて、調達先や生産量、製造工程などを柔軟に変更するのがアジャイルモデルです。需要の変化が大きい市場や、顧客ごとに仕様が異なる商品を扱う企業に適しており、カスタム家具や高価格帯の電子機器などで活用できます。
急な受注の増加や仕様変更に対応するには、仕入れ先と継続的に情報を共有し、生産量や納期を速やかに調整できる連携体制を整えておくことが大切です。
3. 効率重視チェーンモデル
価格競争の激しい市場で、サプライチェーン全体のコストを抑え、利益率を高めるために用いられるのが効率重視チェーンモデルです。価格やコストが競争力を左右しやすい衣料品や家電製品などに適しています。
データ分析を活用して調達から製造、物流、販売までの情報を連携させ、各工程の効率化とコスト管理を図ります。一方、高度なシステムへの初期投資や、サプライチェーン管理に関する専門知識を持つ人材の確保が必要になる場合があります。
4. ファストチェーンモデル
ファストチェーンモデルは、原材料の調達から商品の生産、市場への投入までの時間を短縮し、流行や需要を販売機会につなげることを重視するモデルです。需要が短期間に集中する商品や、流行の変化が速いファッション業界などに適しています。
必要な時期に必要な量だけを調達、生産するジャストインタイム(JIT)を取り入れることで、在庫の保管コストを抑えられます。ただし、在庫を最小限にすると仕入れ先からの供給に依存しやすくなるため、納品の遅れや供給停止が生産に影響する可能性があります。
まとめ
サプライチェーン全体の情報を連携させることで、業務効率化やコスト削減、安定した商品供給につながります。製造業における部品や原材料の管理、実店舗とECの在庫管理、海外からの調達など、サプライチェーンマネジメントを活用できる場面はさまざまです。
効果的に活用するには、需要の変動や商品の特性、市場環境を踏まえ、自社に適したモデルを選ぶ必要があります。まずは調達、生産、在庫、配送などの状況を可視化し、自社のサプライチェーンの課題を明らかにしたうえで、適切な管理方法やシステムを取り入れましょう。
サプライチェーンマネジメントに関するよくある質問
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは、原材料の調達から製造、在庫管理、物流、販売を経て、商品が消費者に届くまでの一連の流れを管理し、全体の最適化を図る経営手法です。
サプライチェーンマネジメントのメリットは?
- 在庫を最適化し、欠品や過剰在庫を抑えられる
- 調達、製造、物流などにかかるコストを削減できる
- 生産や配送を効率化し、納期を短縮できる
- 需要の変化や供給上の問題に対応しやすくなる
- 安定した商品供給によって顧客満足度の向上を図れる
サプライチェーンマネジメントと物流管理の違いは?
サプライチェーンマネジメントは、原材料の調達から製造、在庫、物流、販売、返品まで、商品に関わる流れ全体を管理します。一方、物流管理の対象は、商品の保管や輸送、配送といった物流の範囲に限られます。つまり、物流管理はSCMを構成する一部であり、サプライチェーンマネジメントの方が管理する範囲が広い点が違いです。
サプライチェーンマネジメントの仕組みは?
- 計画
- 調達
- 製造
- 配送
- 返品
サプライチェーンマネジメントの主な活用場面は?
- 製造業における部品や原材料の管理
- 実店舗とECを運営する小売業の在庫管理
- 海外から商品や原材料を調達する事業




