製造業では、仕入れた原材料や部品が、製造工程を経て完成品へと変化していきます。生産の停滞や納期の遅れを防ぐためにも、製造の各段階で在庫の状態や数量を適切に管理する必要があります。
この記事では、製造業における在庫管理の基本から、具体的なやり方や管理方法、おすすめの在庫管理システムまで解説します。

製造業の在庫管理とは
製造業の在庫管理とは、製造や販売に必要な在庫を必要な時に確保できるよう、適切な数量や状態を維持する業務を指します。仕入れや販売に伴う在庫の増減だけでなく、製造の各工程でも在庫を管理します。
たとえば家具製造なら、販売可能な状態の家具だけではなく、木材や金具、組み立て前の部品なども在庫として管理します。
製造業と小売業の在庫管理の違い
製造業と小売業の在庫管理の主な違いは、製造工程に伴う在庫の変化まで管理するかどうかです。小売業では、基本的に仕入れた商品をそのまま販売するため、主に商品の入荷と販売に伴う在庫数の増減を管理します。一方、製造業では、原材料が製造工程を経て仕掛品、完成品へと変化するため、原材料・仕掛品・完成品それぞれの数量や状態を把握し、製造工程を含めて在庫を管理する必要があります。
製造業で管理する在庫の種類
- 原材料:まだ製造工程に投入されていない在庫。調達リードタイム(発注から納品までの期間)を考慮し、製造に必要な数量を確保する
- 仕掛品:製造工程の途中にあり、そのままでは販売できない在庫。複数の工程がある場合は、各工程にある数量を把握し、製造の進捗に合わせて管理する
- 完成品:製造を終えて、販売できる状態の在庫。需要に応じた数量を確保し、欠品と過剰在庫の両方を防ぐ

製造業の在庫管理が重要な理由
適正在庫を維持できる
在庫の数量を定期的に把握し、発注量や生産量を調整することで、余剰在庫の保有にかかるコストや資金の滞留を抑えながら、在庫不足による生産の停滞や販売機会の損失も防ぎやすくなります。結果として、キャッシュフローの改善や売上アップにつながります。
蓄積したデータを需要予測や生産計画に活用できる
在庫の増減や販売実績を継続的に記録することで、製品の売れ行きや季節ごとの需要変動を可視化できます。そのデータをもとに今後の需要を予測し、必要な生産数や材料の仕入れ時期を決めることで、生産計画の精度を高められます。
品質管理やトレーサビリティに役立つ
製造業の在庫管理では、同じ時期に仕入れた原材料や同じ製造単位の製品などを「ロット」としてまとめ、ロット番号を付けて管理することがあります。どのロットの原材料がどの製品に使われたかを記録しておけば、不具合が発生した場合に原因となった原材料や影響を受ける製品を特定しやすくなります。

製造業の在庫管理方法
- 需要を予測して生産量を決める:過去の販売実績や受注状況、市場動向などをもとに、完成品がいくつ必要になるかを予測します。
- BOMをもとに必要な原材料を算出する:BOM(Bill of Materials)とは、製品を作るために必要な原材料や部品と、その数量をまとめた部品表です。BOMと現在の在庫数を照合して、追加で調達すべき数量を算出します。
- 原材料を調達し、入荷時に記録する:必要な原材料を発注し、入荷したら数量や品質を確認します。入荷した在庫は、品目だけでなく、必要に応じて保管場所やロット番号、使用期限なども記録します。
- 製造に投入した原材料と仕掛品を追跡する:原材料を製造工程に投入したら、その分を在庫数から減らします。同時に、製造中の製品を仕掛品として管理し、各工程でどれだけ存在しているのかを把握します。
- 完成品として在庫に計上する:製造と品質検査が完了したら、仕掛品在庫から完成品在庫へ移します。完成品は、受注や販売に応じて出庫し、その分を在庫数から減らします。
- 棚卸とデータ分析を行う:定期的に在庫数を数え、記録されている数量と一致しているか確認します。また、在庫の推移や回転率などを確認し、次回分の需要予測や材料の発注に役立てます。
製造業で役立つ在庫管理の考え方
- プッシュ方式:需要予測にもとづいて、あらかじめ製品を生産しておく方法です。注文へ迅速に対応できる一方、予測を誤ると過剰在庫が発生する可能性があります。
- プル方式:顧客からの注文などが入り次第、生産する方法です。既に販売が決まっている製品を生産するため過剰在庫を抑えやすい反面、納品までの時間が長くなることがあります。
- ジャストインタイム(JIT):生産に必要な原材料や部品を、必要なタイミングで必要な量だけ調達する考え方です。自社で保有する在庫を減らせる一方、仕入先からの納品が遅れると生産に影響するため、安定したサプライチェーンが必要です。
- ABC分析:在庫を重要度に応じてA、B、Cの3つに分類し、管理の優先順位を決める方法です。たとえば、金額や重要度の高いAランクの製品や部品は細かく管理し、重要度の低いCランクは管理にかける工数を抑えるといった使い分けができます。
- 経済的発注量(EOQ):1回あたりの適切な発注量を求める計算方法です。一般的に、複数回に分けて少量ずつ発注すると発注作業や送料などの負担が増え、一度にまとめて発注すると在庫の保管コストが増えます。EOQでは、この両方のコストを考慮して、適切な発注量を算出します。
- 安全在庫と発注点:安全在庫とは、急な需要増加や納品遅延などに備えて保有しておく予備の在庫です。発注点とは、「在庫がこの数量まで減ったら次の発注を行う」という基準です。安全在庫を確保しながら発注点を設定することで、必要以上に在庫を増やさず、欠品リスクを抑えられます。
- 先入れ先出し:先に入荷した在庫から優先して使用、または出庫する方法です。長期間の保管による品質劣化や型落ちを防ぎやすくなります。また、製品に初期不良などが見つかった場合、入荷日やロットも特定しやすくなります。

製造業で在庫管理システムを導入するメリット
在庫情報を一元管理できる
原材料、仕掛品、完成品の在庫数に加え、保管場所やロットなどの情報をまとめて管理できます。また、調達、製造、販売など各部門の担当者がリアルタイムで情報を共有できるため、在庫状況の変化を把握しやすくなり、欠品や過剰在庫の早期発見にもつながります。
ヒューマンエラーを減らせる
在庫管理システムを活用することで、手入力を減らし、入力ミスや更新漏れを防ぎやすくなります。たとえば、在庫に付けたバーコードや二次元コードを読み取って入出庫を記録したり、ECサイトや販売管理システムなどと連携して、受注や出荷の情報を在庫データに自動で反映したりできます。
発注業務を効率化できる
在庫管理システムのなかには、品目ごとに発注点を設定し、在庫数がその基準を下回ると通知を送信したり、発注が必要な品目を一覧表示したりできるものがあります。担当者が在庫数をひとつずつ確認する必要がなくなり、発注業務の効率化や発注漏れの防止につながります。
製造業におすすめの在庫管理システム6選
zaico
zaico(ザイコ)は、ITツールが苦手な人でも操作しやすいUIを備えたクラウド在庫管理システムです。スマホとパソコンの両方で利用でき、複数のデバイス間でデータが自動的に同期されます。また、入出庫や棚卸の際には、スマホでバーコードなどを読み取ってデータを記録できます。
料金:月9,878円(税込)のスタータープランなど
在庫スイートクラウド
在庫スイートクラウドは、在庫管理の現場に必要な機能を備えたシンプルな在庫管理SaaSです。スマホで読み取ったデータのリアルタイム入力、ロットやステータスの管理、複数拠点にある在庫の一元管理などに対応しています。
料金:月3.5万円(税抜)〜、初期設定費用30万円(税抜)のLiteエディションなど
スマートマットクラウド
スマートマットクラウドは、スマートマットを活用したクラウド在庫管理システムです。マットの上に在庫を置くと、重量を計測して在庫数を把握し、棚卸や在庫数の入力を自動化できます。すべての在庫をマットで管理する必要はなく、重要性の高い在庫や、数えるのに手間がかかる在庫などに絞って利用できます。
料金:要見積もり
SmartF
SmartF(スマートエフ)は、ものづくりに特化した在庫管理システムです。リアルタイムの在庫管理機能だけでなく、発注や仕入れの一元管理、作業工程の進捗管理、原価の自動計算、ロットトレース(ロット番号をもとに原材料から出荷までの履歴を追跡すること)など、製造に関する機能を拡張できます。
料金:初期費用50万円~、月額使用料5万円~、導入支援費用など
アラジンオフィス
アラジンオフィスは、さまざまな業界に対応したERP(基幹業務システム)です。標準的な在庫管理機能を備えているため、ERPによる在庫管理が可能です。また、製造業向けの機能として、受発注の管理、生産計画の作成、製造実績の記録などにも対応しています。
料金:要問合せ
rBOM
rBOM(アールボム)は、個別受注生産(発注を受けてから、製品の仕様や設計を個別に決定し、製造する業務形態)に特化した生産管理システムです。部品情報をリアルタイム統合部品表として一元管理し、在庫状況などを部門間で共有できます。また、BtoB ECサイトのMISUMI(ミスミ)と連携し、見積もりや発注業務も自動化できます。
料金:要見積もり
製造業向け在庫管理システムを選ぶ際のポイント
必要な機能が揃っているか確認する
在庫管理システムは、それぞれ対応している機能が異なります。まずはシステムの導入で何を達成したいかを明確にし、そのために必要な機能を備えたものを選びましょう。たとえば、製造拠点や倉庫が複数ある場合は、それぞれの在庫を一元管理できる機能があると便利です。また、在庫管理だけでなく、製造工程や原価までまとめて管理したい場合は、生産管理機能を備えたシステムが適しています。
一般的に、機能が多く、対応する業務範囲が広いシステムほど、料金も高くなる傾向があります。自社の規模や導入目的に合ったシステムを選ぶことで、無駄なコストをかけずに導入できます。
現場で利用しやすいか確認する
製造業では、日々の製造プロセスに必要な原材料の入出庫など、現場でも日常的に在庫管理システムを使用します。そのため、担当者が迷わず操作でき、簡単に入力できることが重要です。操作しやすいシステムであれば、現場にも定着しやすくなります。
たとえば、スマートフォンやハンディターミナルで在庫に貼られたバーコードを読み取って入出庫を記録できれば、手入力を減らし、作業をスムーズに進められます。導入前に、画面の分かりやすさや操作手順、現場で使用する機器への対応状況などを確認しましょう。
既存システムとの連携を確認する
販売や営業などの業務で利用しているシステムがあれば、在庫管理システムと連携することで、在庫情報を共有しやすくなります。同じ情報を複数のシステムに入力する手間を減らし、部署ごとの在庫情報にズレが生じることも防げます。
たとえば、ECサイトと在庫管理システムを連携できれば、在庫情報が連動するようになります。完成品が入庫されたらECサイト側の在庫数も更新されるため、入庫した商品をすぐに販売でき、販売機会の損失を防ぎやすくなります。
まとめ
製造業の在庫管理では、完成品だけでなく、原材料や部品、仕掛品まで含めて在庫を把握する必要があります。需要予測やBOMをもとに、必要な材料を適切なタイミングで調達することで、過剰在庫や欠品を減らし、生産や資金繰りを安定させやすくなります。
品目数が少ない段階であれば、Excel(エクセル)などの表計算ソフトへの手入力でも対応できますが、品目が増えたり、部門間でリアルタイムな情報共有が必要になったりした場合は、在庫管理システムなどの導入を検討しましょう。
製造業の在庫管理に関するよくある質問
製造業の在庫管理とは?
製造業の在庫管理とは、原材料や部品、仕掛品、完成品などの在庫の数量や状態を把握し、適切な数量を維持する業務です。
製造業の在庫管理の課題は?
製造業では、原材料の調達タイミングを見誤ると生産に遅れが生じ、製品の欠品によって販売機会を逃す可能性があります。一方、欠品を避けるために原材料や製品を多く抱えると余剰在庫となり、キャッシュフローに悪影響を与える可能性があります。
製造業の在庫管理はExcelでもできる?
Excelでも在庫管理はできますが、基本的に手入力となるため、入力ミスや更新漏れが起きやすくなります。
製造業におすすめの在庫管理システムは?
- zaico
- 在庫スイートクラウド
- スマートマットクラウド
- SmartF
- アラジンオフィス
- rBOM




